70年代と今の見た目の違い
自転車ブームということとは関係無しに自転車に再度乗り始めたけど、今の自転車と自分が現役の時代の自転車っていうのは、或る意味、何にも変わっていないようで、全て変わっているようでもある。
基本的な構成は不変だけど、パーツの細部や機構は随分変わっている。思い付く事を書き並べると、
フレーム:クロモリ、マンガンモリブデン→アルミ、カーボン、チタン
ステム:スレッド構造→アヘッド構造
変速レバー:フリクション式Wレバー→STI
変速機構:フリクション→インデックス化
クランク:コッタード、四面テーパー式コッターレス→オクタリンク、ホローテック
ブレーキ:サイドプル、センタープル、カンチ→デュアルピポット、Vブレーキ
ペダル:トークリップ→ビンディング
他にも在るんだろうけど、今思い付くのはそんな感じ。
しかし、それ以上に大きな変化を感じるのは、サドルのかち上げ度である。昔は、今程シートポストを露出させて乗らなかったように思うところ。せいぜい30~50mm程度のモノであり、今の150mmオーバーって状況や、異様な程のステムとサドルの落差は無く、ステムとサドルトップが水平ってのが基本だったように思う。今の格好良さっていうと、ハンドルとサドルの落差が激しく付いて、サドルが天高くそびえ立つように取り付けられたデザインのようだ。
この違いは何か?って考えると、メインサイトにも書いたけど、何よりも自転車の作り方が変わったためか?とも思える。昔のフレームは超薄肉の鋼管であり、フレームは極めてしなやかな材料で組まれているけど、今のフレームは軽量高剛性のアルミ等でありフレームの剛性は極めて高い。
しなやかな骨格はしなりの周波数を下げるには大きな変形が必要であり、フレームダイヤモンドをなるべく大きく取るのが合理的だが、頑強な骨格はダイヤモンド構造をなるべくコンパクトに作るのが合理的。そんな風にも考える事ができる。つまり、アルミフレーム故に、剛性を高める手法としてスローピング構造による三角形のコンパクト化を図った結果、シートポストの突き出し長が長くなったというモノでは無いだろうか?
だから、今の自転車の格好良さの基本は、アルミスローピングフレームの高剛性デザインにこそ理に適っているのかなぁ?と思ったりもする。そう考えると、昔のデザインは古いのではなく、昔の考え方に対して合理的なデザインなのかもしれない。
最近は、アルミスローピングフレームのラングスターと531-101パイプで組まれた大きめのホリゾンタルフレームのロードに乗る事が多いが、この二台、CT長は大きく違うのだが、トップ長は全く同じで525mmである。
自転車のフレーム選びで最も重要なのはシートチューブ長ではなくトップ長であるが、トップ長が同じでありながら、ラングスターはシートチューブ長CTで520mm、531ロードは550mmで30mmも違うのである。でも、設計者の意図としてはトップ長から判断されるように乗り手の身長は差異が無いとも考えられる。
そう考えると、アルミスローピングはシートポストが長めってのが合理的であり、鋼管ホリゾンタルではシートポストが短めってのが合理的なのかもしれない。
そんな事を考えるのは、今、自分の書斎には自転車が溢れかえっているのだが、近代的なTT仕様のラングスター、クラシカルな531ロード、未来的なルイガノMVF改、他にもオ・モイヨWW、西DAHONとあるけど、一番ハートにしっくりくるのは、一番クラシカルな531ロードだったりするのである。これはかなりイイ感じである。リアエンド巾120mmっていうのも車体全体がスリークな感じにみえるし、細身のストレートパイプのフレームワークが大きめのダイヤモンドによって更に細く見えて繊細な感じ。変速操作を行う上でも最もシンプルなWレバー等々は、全てにおいて合理的に見えるのである。
その繊細さっていうのは、現代~未来の自転車が完全にマスプロダクションによる工業生産品って雰囲気に対して、明らかに工房で作られた工芸品って雰囲気である。そこにはスペックに現れない空気も感じれるし、工芸品故に、完全に同じモノは二つと無いというところがハートを鷲掴みにしているように思うのである。
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