究極の無潤滑摺動システム(先行待機運転)、発想の転換が必要
なんか知らないけど、『先行待機』って言葉でググルと上位にヒットするのが、このブログ。実際、そういうキーワードで検索する人は結構多いのが興味深い。
さて、先行待機って言葉の意味は何か?っていうと、読んで時の如くで、通常使用状況の前段階において運転状態を維持して待ち受けるというもの。つまりは、機械にとってイレギュラーな状態を許容するって意味である。
そして、この先行待機って言葉は、何に使われているか?っていうと、これは実はポンプのような回転機械に用いられる事が多い。そして、回転機械の摺動システムというと、それは回転軸を支えるベアリングに他ならないのである。
回転軸を支えるベアリングが摺動システムと結びつくというと、それは玉軸受等の転がり軸受ではなく、滑り軸受というシステムにおける話である。
さて、滑り軸受という面と面が擦り合うタイプの摺動システムは、通念的な常識としては摺動面の間には摺動材料同士が直接接触しないというのが大前提であり、この接触させない物質が油であったり水であったりするのだ。この物質が水の場合には、この摺動形態を水潤滑(流体潤滑域)というのである。
水潤滑というのは摺動面に液体被膜(水膜)が形成されているのだが、水膜が形成されるか否かは、摺動システムの形状因子(径、隙間から定義される偏芯因子、表面粗度)、環境因子(荷重、周速、粘度、温度)によって決まるものである。形状が不適切であったり、想定外環境においては摺動面通しの直接接触を妨げる水膜が形成不良となるが、この水膜形成が不十分な状態を境界潤滑域(混合潤滑域)と言う。(ここまでは一般論で、隠す迄もない衆知の事実。)ベストなのは水膜が形成された摺動状態において水膜厚さが最大となり軸偏芯が最小となる状況。運転条件に見合った隙間設計こそが鍵。
このような滑り摺動機構においては、如何に摺動面の流体被膜を形成させて失わせないか?っていうのが正攻法的な考え方なのだが、この考え方を先行待機システムに適用しようとすれば、大きな落とし穴がある。
その落とし穴に気付かずに、その流体潤滑状態を前提とした摺動システムのデザインに突進すると、大きな矛盾を抱えるのだが、そのパラドックスに陥っているが、日本を代表する大企業の摺動システムのエンジニアであったりする。
さて、先行待機というのは、流体機械の健全状態の前段階における運転ということで、これがポンプという機械ならば、それはポンプ内部に液体が存在しない状態での運転ということ。つまり、ポンプ内部において作動流体の存在が前提で機能するであろう本来の滑り摺動軸受システムが、軸受摺動の大原則である流体被膜を持たない状態で使われるという事態を示している。
このような流体が存在しない状態で、流体潤滑軸受システムを設計するというのは大きな矛盾(流体が存在する上での優れた摺動特性を発揮する因子は、流体が存在しない条件における破壊加速因子となる。)であり、先行待機運転においては流体が存在しないという状態をデフォルトとしたシステムのデザインが必要なのだ。流体が存在しない状態とは、冷却機能が期待出来ない事であり、発熱を如何に抑えるか、発熱を如何に分散させるか、この辺りが勘所である。
詳細は特許等に関連するので公開はしないが、私の発案したシステムは、摺動条件において液体の存在を必須としない事を出発点としており、旧来の摺動システムとは設計思想が全く異なるものである。つまりは、凝り固まった水潤滑の常識は全く通用しないもの。開発のコンセプトは破壊のプロセス、想定外負荷における状態変異プロセス等考えられるあらゆる状況に対応している。
一般に、旧来の摺動システムにおいて作動流体が存在しなければ、その構成材料は致命的な損傷を受ける。なぜならば、流体潤滑システムは、混入異物耐性の高い超高硬度材料を使用したり、或いは、表面を極めて滑らかに加工製作することによって性能を高めているが、そういう手法と選択材料は、潤滑の前提が失われた場合、凝着、脆性破壊、熱衝撃破壊という現象で致命的かつ終末的な事態に陥るのである。
開発システムは摺動条件に流体の存否を問わない特徴を有しているが、万が一の不測の事態においても、構造的に旧来システムの陥るような終末的かつ致命的な破壊形態を示さないという大きな特徴を有しているのである。
このような特徴を振り返るならば、それは既に液体中での使用を前提とした摺動システムとは異なり、既に、気体中、真空中といった潤滑に有利な条件の無い環境においても耐える摺動システムとなっている。試験では、摺動に組み合わせる系を変化させることで、実は最高使用温度で900[℃]近辺でもシステムが破綻しないものである。それは、先行待機というレベルとは異なり、無潤滑摺動システムといっても良いものであり、その方面でユーザーを発掘していくのも面白そうである。
前述の先行待機という括りでは、摺動システムを構成する一部品の外注先を代理店指定としているが、次なる手に関しては、その技術を欲している業種を見定めたリサーチ(業界のリーダーとの接触)が必要だろう。心配せんでも、先行待機用途軸受に関しては代理店さんオンリーだから大丈夫!契約を心配する声もあるけど、契約書を交わすとなると、契約に相当する金銭の授受が発生しますよ。もう一つ、別次元の話は、全く別次元。
更には、この考えを専門的な研究機関の評価テーブルに乗せて、価値あるものか否かの声に大きな関心があるところだ。
ところで、この冗長な文章で言いたい所は、旧来の前提に捕らわれると、先にいったようなパラドックスに陥るのだが、その前提を一歩下がって見直すと全く違う発想が生まれるのだが、その発想に従って既成概念に囚われず考えると色んなアイデアが浮かぶものである。
どんな分野にも手順、公式・・・が存在するが、その適用する意味や意義を考えていけば、また違った発想が生まれるように思う。新しい発想とは、持っている知識の理解を吟味する所から生まれるもの。他聞からの先入観を捨てて、経験による知識のみで物事を考える癖が必要ではないか?他人の話を聞いて理解したと錯覚することが一番怖い事。
そんな事を自分の部下や、勤務先での関係部署のスタッフ、或いは、本件の摺動システム代理店のスタッフに言いたいのである。折角、生きているのだから、自分の頭で考えて、人の話を聞いただけで知ったと錯覚して自分の可能性の芽を摘むのは最悪である。
この記事の元ネタである『先行待機』だが、先行待機っていうと主たる機能の附属機能的な印象だが、逆を考えて、完全無潤滑摺動を主たる機能として考え直すと新しい案が生まれるのでは無いだろうか?一番大切なのは、各人レベルで知っている知識を各人レベルで理解する事。知識の暗記では意味がないのである。だから、性別、年齢、学歴なんか関係なく、人の置かれた位置毎に、自分の意見が出せる能力の有無が重要だ。
聞いた言葉に疑念を持たず解ったと錯覚する、、、、、怖いものである。
折角だから、リクエストや製造業からのアクセスが増えれば、他にも行った策や例を折りを見て紹介しようかなぁ、、、
この記事の検索キーワード:先行待機、無注水、固体潤滑、無潤滑、気中運転、エアロック、締切運転、バキューム、真空、ドライ運転、摺動、軸受、ジャーナル、ベアリング、滑り
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