« 同窓会案内 | トップページ | 特許技術の行方 »

2008年4月27日 (日)

先行待機運転、先行企業の先走り。

 ここ数日、先行待機にヒットしての来訪者がコンスタントに居る。

 で、同じく『先行待機』でググッて見られる技術の共通点で自分の技術との相違点。

 それは、自分以外は流体潤滑軸受の延長線上で設計していると言う事。更には、偉そうに特許内容を開示しているところを含めて、全ての企業が回転側硬質材料に基材をWC(タングステンカーバイド)を用いた超硬合金(Niバインダー、Coバインダー)を用いている事。極ジェネラルな超硬合金だが、これを特殊合金と表記している会社も多いようで、何が特殊か?と詰め寄りたい気分でもあるのだが、、、、、

 これ、大きな間違い(勘違いというか先走り?)である。

 指摘すると、

1.流体潤滑性能追求では、無注水摺動時において発熱過大となる。

2.硬質脆性材料を無潤滑発熱環境で用いると、最終的に割れる

 という二点。割れると、機械は直ちに止まる。本質的に発熱しやすい設計して、発熱した揚げ句に割れるっていうのは、機械の考えとして大きな欠陥である。俺に言わせれば、愚か者的発想、誰かのアイデアにみんなが群がって解決策を見失っている状態。

 クイズではないけど、この二点の矛盾とは縁遠い手法が必要。これを考えるのが大事だ。

 因みに、硬質材料同士の無潤滑摺動組み合わせで最も摩擦係数が低い組み合わせを選んだ時の回転側硬質材料は超硬合金というのは真実だが、無潤滑摺動をしていくと、回転体部位は条件にもよるけど、温度は軽く100[℃]以上になるし、負荷、周速が高まると500[℃]、1000[℃]近辺にもなる。超硬合金を回転側摺動材に用いると、その回転軸(回転側摺材の内部)の軸材材質にもよるけどSUS316L、SUS304なんかでは嵌め合いと軸径に対する肉厚比にも寄るけど設計温度+80[℃](概ね100[℃]程度)で破断する。SUS329J1或いはフェライト系SUSでも150[℃]には耐えれない。
 しかし、実際の無潤滑全力摺動では、その程度には軽く到達する。

 破壊モードでは、一般に回転側の温度上昇が激しく、第一段階で回転側超硬合金が破壊される。既存の思想で、回転側超硬合金の肉厚を数ミリというものを十数ミリに設計変更しても、温度上昇の限界が300[℃]には到達しない。
 そのような高温域では、回転側材料自体の熱膨張により抱き付きを誘因しやすく、その状態では発熱を抑える事は不可能だ。

 この温度域になると超硬合金自体も酸化の影響を受け始める。一方で固定側の摺動材にしても相当なダメージを受ける。固体摺動=局部摺動であり、熱衝撃による摺動材の破壊も受ける。熱衝撃による破壊が軸受摺動材料の全周に影響しない構造の場合は、有機材料による摺動材の保持が前提だが、有機材料と無機材料を結合させる有機無機結合(シロキサン結合、信越化学工業さん等で取り扱ってる商品だし、カタログに物性も載っているんで衆知の物)っていうのは、熱分解に耐える限界温度が175[℃]以下。

 最近は、先入観というか代替案が見出せないせいか、回転側に超硬合金を用いるのが業界の常識的通念とした上で、固定側に昔ながらの珪素系無機材料である炭化珪素、窒化珪素、サイアロン・・・から有機樹脂材料(ポリエチルエーテルケトン)なんかに解決策を求めているようだけど、発想の基点というか出発段階で致命的欠陥を抱えている。

 ホントのところ既存システムは突っ込みどころ満載で、超硬合金をステンレスシャフトに嵌めている回転側摺動材は、結合相にCoやNiを用いている限り水中(特に海水中)で使用すると100%腐食する。更にはステンレスシャフトに接して使えばガルバニック腐食でバインダーの溶出が顕著だし、実際は問題だらけなんだがなぁ、、、仮に、NiやCoを使わなかったら円筒形状で使用するには引張強さも強度も全く不足し使い物にならない。なのに、エンドユーザーを誑かして、公上では出来た出来たといっても、結構壊れているのが現実。

 そういう形で、従来システムでは、本質的に無潤滑摺動を実現する能力が備わっていない。全ての既存システムは評価した上での話だ。この本質的欠陥をクリアするには、既存システムの設計ガイダンスとは異なるガイダンスに則った発想が必要ということ。

 もう一つ、先入観に囚われたエンジニアの盲点というか無知ぶりを指摘すると、無潤滑環境における摺動負荷の考え方。
 この摺動負荷を模擬的にシミュレートして評価しているようだが、模擬前提が水力学的な論理を展開しているのが過ち。ドライ、先行待機、という条件では、模擬前提に水力学的な論理では再現できない。別の論理が必要。何が必要か?は、ここでは内緒だが、それ気付かずして試験装置を作っても無意味ということに気付かないのは情けない。

 摺動負荷は運転モードによって支配因子が変わるもの。正規運転では水力学的な計算でOKだが、異常運転では負荷荷重の支配因子は別にあり、それに見合った負荷シミュレートを行わなければ無意味である。当然の筈だが、これを数値計算し、これを再現する機構を持って評価しないと無意味だろ!?
 勿論、自分で評価するために、運転モードを三通りに変えて支配因子毎の負荷再現システムも開発しデータ収集出来るシステムを作って評価した上での話だ。

 と言う事で、上の二つの無知に加えて、三つ目の無知を指摘すると、

3.評価で水が無いのに水力学的負荷で評価するのはNG

 ってところだ。

 これ読んでる人、判るかな?

 まぁ、摺動システムを設計するには、構成材料の材料設計、材料開発から異常状態における挙動分析と解決策の提案が出来ないと無理。製造方法を知っていても、製造する数値を決する機械設計、要素設計が出来ないと無力。要素設計をしようと思えば、マクロ設計でなくミクロ挙動に応じた原理原則に基づいた数値設計、解析、予測が出来ないと無理。その辺りになると、便覧的な文献には書いてない。経験式が乗っていても、その基礎式が何で、どのような修正が加えられているか?を推論する力が必要だ。そこまで考えて、初めて独創性が生まれるものだ。その果てが、特許という形に結実する。判るかな?

 まぁ、そういう考え方で因果を追求し、その上で自身の考えを導入することで発見に繋がるもの。

|

« 同窓会案内 | トップページ | 特許技術の行方 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 先行待機運転、先行企業の先走り。:

« 同窓会案内 | トップページ | 特許技術の行方 »