趣味と仕事
ここ数年の話だが、完全に趣味的な範囲で特殊な滑り軸受(ジャーナル軸受)を考えている。ジャーナル軸受というと単車のエンジンパーツ的に言うとメタルなんかが該当する箇所。
このパーツは考えてみれば、固定円筒と回転軸から構成される超単純なモノなのだが、これが結構な曲者である。単純故に難しい所があるし、簡単故に数値を決めるのも色んな配慮が必要なのである。
自身、機械製造業に勤務しているけど、少なくとも設計部門において、このような部品の詳細部位を完全に数値計算する部署は無いし、メタル部分の軸と軸受の隙間にしても、半ば、エイヤッ!で決めるのが殆どである。隙間=軸径の1/500~1/1000とか、発熱量計算にしても殆ど設計ハンドブックに載ってる公式に数値を入れるレベルに留まっている。
まぁ、一般的には、それで問題ない場合が多いのだが、これが一般的でない場合は、普通に選んでいた数値がトラブルの原因となったりする場合があり、適当に決めていた数値に根拠を見出さなければ何かの対応も不可能となったりする。
そういう訳で、自分がこの機械要素を理解するには、構成する材料が要求する物性がどうで、加工する際の制約は?制約で得られる形状が及ぼす影響は?から、基本的な隙間にしても条件に応じて完全に数値計算できるプログラムを作成し、数値の決定には経験という名の曖昧さで決める方法とは全く異なる方法で決めている。ジャーナル軸受の隙間決定には軸受の摺動条件、寸法要件、介在流体物性によるけれど、プログラムを組んで数値計算結果を見ると実に興味深い傾向が判るし、摺動部材の使用過程における馴染み現象とは一体何で、交換時期と呼ばれるのは、どんな状況が該当するかも明らかになる訳で、通常の文献や資料には記載されていない事も明らかになる。それが判ることが実に愉快な訳である。
そして、現在のテーマは、この機械要素が一般の流体潤滑環境下以外でも使われるという状況を想定して、勝手なモデルを作り通常では考えられない状況で使えるようなアイデアを温めているのだが、その発想を支える知識は何か?というと、これは実は完全に趣味の世界の知識だったりするのである。
機械要素開発で引用したモデルの例を挙げると、
・単車や車、スペースシャトルのブレーキシステム
・最終期の2ストロークエンジンのシリンダー処理技術
・便所掃除?
・歯磨き?
・ロータリーエンジン実用化に際して遭遇した苦労話
・掃除機
・電動ラジコンカー(電動の4WDツーリングカーであるヨコモのYR-4、他にプロテン)
・マツダスピードのRX-8の強化クラッチ
・長寿命工具
・軽石
・NGKスパークプラグの製造工程
・理容師さんのスペシャル長寿命のハサミ
等々が羅列される。他にも色んな参考資料があるけれど、まぁ、趣味の二輪や四輪のパーツ類、技術発展の歴史等が大きなヒントとなっている。
仕事という分野の発想のヒントは趣味の世界に転がっていたり、物事を解き明かす方法のヒントも趣味の世界に見つけたりする。趣味だろうが仕事だろうが、結局は、好奇心を解き明かすプロセスが必要であり、それを解明しようという探求心こそが必要で、その探求心を有効なモノとするには、分野分け隔て無い範囲に及ぶ知識であったり、論理であったりする。その論理や知識は、分野によっては陳腐化するものも有る訳で、常に、今のトレンドがどうか?っていうのは収集し続けて過ごしたいものである。
こうやって頭を使うという時間は最低でも1日で1~2時間程度は欲しいところ。これを勉強と捉えるか?或いは、趣味の調べ事と捉えるか?は問題でないが、要は頭の体操をする時間が絶対必要だということだ。頭の体操、身体の体操、これが生きていく上で不可欠なものである。
結局は、先の健康の重要性の中で、身体の衰えが恐いという記事を書いたが、同じく、脳の老化による自己崩壊も恐いということ。腐った脳の持ち主や新しい事に拒否反応を示すようは保守思想に陥るような事だけは避けたいのである。そのためには、生活や仕事で活用することができる趣味っていうのは大事にしたいものである。
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