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2008年7月 2日 (水)

How much? セラミックス!

 普通、エンドユーザー向けの製品の価格っていうのは概ね相場が決まっている。
 しかし、一般消費者向けでない製品、特に、特殊な製品っていうのは価格は決まりにくいし、表に出て来ないモノ。

 さて、そんな相場があってないようなモノの価格を如何ほどにするか?っていうのは、極めて難しい。更に、そのモノが量産体制に乗ってない場合は尚更だ。

 一つの例として、特殊な超硬合金の価格は幾らが適正か?を考えてみる。
 一般に超硬合金というとWC(タングステンカーバイト)粉末に、Co(コバルト)或いはNi(ニッケル)粉末を均質に混合した混合粉体を原料に、これを成型後焼成し、加工仕上げすることで製造する。この場合、製造方法が確立しており価格相場も概ね決まっている。

 そこで、特殊な超硬合金というと何が特殊か?というところで説明すると、材料内部にNi、Coといった元素が全く含まれていない事が特徴である。この元素は、一般に材料の製作性を高め、強度、靱性といった機械物性を高めるのに不可欠な物質だが、これがあるがために、耐食性が著しく悪化するというモノ。
 特殊な材料というのは、この腐食に対する強さを追い求めてNi、Coを極僅かも一切含まない事を特徴とする材料である。市販のNiレス、Coレスって表記材料は、厳密に言えば少量のNi、Coが含有されているモノだが、特殊材料では全く入っていないというのが特殊性である。

 この特殊性によって失う機能というのが、普通では、強度であったり、靱性であったり、製作性であったりするのだが、この強度、靱性、製作性を改善させるには色んな手法がある。
 一般には、

・原料粉末の粉末粒子径を微細にする。普通は数ミクロンをサブミクロンオーダーへ!
・全く別個の材料を用い、強度、靱性を高める。
・全く別個の材料を用い、製作性を高める。

 という方法だ。

 で、特殊な材料は、特別にNiやCoとは全く別の材料を加え、更に、通常合金材料とは1オーダー微細な超微細粉末を原料にして製作する。

 製作工程は、

1.原料購入・・・・・単価と組成を掛けると原料粉体購入価格は12,000~15,000円/kg
2.粉体混合・・・・・超微粉を湿式、乾式混合で調合する。所要時間は合計4時間

 で、製作パターンは二種類あって、基本的なホットプレス法と常圧焼成法があるが、

・ホットプレス法の場合は、(使用設備費合計は8000万円くらい)
3-1.型充填・・・・加熱と加圧を行う型に充填する。一個段取りに1時間
3-2.焼成・・・・・・加熱兼加圧で焼き固める。1800[℃]で0.5[ton/cm2]。一個を6時間
3-3.加工・・・・・・Hv=2400級の硬質材料でダイヤモンド加工で4時間/個

 因みに、素材重量は850gで粉体費用だけで、最高10,200~13,000円/個

・常圧焼成法(専用設備で1.5億円くらい)の場合は、素材重量250gに限り設備があるので、
4-1.造粒・・・・・混合粉体に樹脂バインダーを加え顆粒化。36時間/40個
4-2.分級・・・・・顆粒体サイズを整え金型充填性を高める。3時間/40個
4-3.成型・・・・・面圧で2[ton/cm2]で金型成型加工。6時間/40個
4-4.脱脂・・・・・成型加工体を素焼き状態としてバインダー除去。20時間/40個
4-5.焼成・・・・・素焼き体を1800[℃]以上で焼成。6時間/20個
4-6.仕上・・・・・単体をバリ取り。5分/個

 このような工程を要するものがある。ホットプレスで例を示すと、購入素粉体が10,000円オーバー。加工に15時間を要する。さて、幾らが適正か?

 割と具体的に書いたのは、このブログ、材料を買いたい企業のスタッフもチェックしているようなんで、少し考える材料を提供してあげているだけ。あんた達、幾らなら買う?対象は上記3の方法で製作する材料だ。
 更に言えば、前述したように、腐食因子であるNi、Coを全く完全に含んでいない材料で、世の中で唯一無二の材料である。設備チャージは明かさないが、無理に売るような材料でも無いのである。摺動材料に特化して作ったセラミックスであり、競合品が存在しないモノでもある。

 因みに、超硬材で普通のCo超硬合金の製品の価格を見つけた。

http://www.rakuten.co.jp/nishitani/511979/583154/

 である。丸で仕上げ無しの小さなモノで5.5万円だそうだ。

 ということで、価格は幾ら?というと、煙草ケース大の直方体形状メタルチップ(重量850g)、縦辺二本、横辺二本、高さ辺4本をC=5程度の面取り加工して、本音を言えば自分の管轄設備なら諸々で最低で6万円っていうのが本音である。この材料、Hv=2400以上という硬質材料で、Coレス、Niレスで曲げ強さは1.2[GPa]以上。加工するのが超難儀なのだ。
 原料費で1万円を超えるものを1万円台で欲しいという所もあるのだが、まぁ、有り得ない。

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