自転車のパーツ選択っていうのは基本はそれ程難儀ではない。普通に取り付け可能なモノは普通に取り付ける事が出来る。しかし、普通に?付かないモノを付けるとなると殆どの場合で諦める事が多い。それでも、普通に付かないモノを付ける場合は、殆どがワンオフ製作というか大きな手間が必要となる。
そんな中で、普通に、普通のモノを使って、常識的には困難な組み合わせであっても、僅かな工夫でどうにかなる組み合わせっていうのもある。
その顕著な例っていうのが、フレームとハブ、カセットの組み合わせであったり、カセットの歯の組み方だったりする。
前者の場合っていうのは、Rエンド幅が120mm程度のフレームに10速は無理にしても8速ないし9速を組み込む場合であったり、最近のフレームに一般では難しいとされているジュニアカセットのカセットを組み込む場合だったりするし、後者の場合は、カセットの歯数の組み合わせを変更する際に、変速性能低下という言葉で断念せざるを得ない場合だったりする。
恐らくは、他にも似たような事例は有るだろうけど、最近対応したのが上の二点のために、チョット記事にしてみようと思ったのである。
まずは、大昔のエンド幅120mmのフレームに9速を組む場合に行った事、、、、、これは9速対応のハブを使うということで、OLD寸法130mmのハブを使う訳だが、これを120mm化する場合、どうするか?ということだが、、、、ハブ内の玉押し、スペーサーの寸法を調べ、機能に差し支えない範囲で組み換えることで120mmOLDが作れるモノを探すのが第一である。
これをシマノのロードコンポからピックアップすると、、、、
・DURA ACE
これは、ロックナットとスペーサーが一体で組み換え部品が膨大となるので没。
・アルテグラ、105、ティアグラ
左側スペーサーの厚さが4.8mm。抜く事で125mm前後なら可能。勿論、ロックナット、スペーサー等々交換部品点数を増やせば何でもOK。時代的にチョイ前の126mmエンドのフレームなら、この方法で行ける。126mmフレームに130mmOLDハブを無理矢理入れるっていうのがスタンダード?だが、たかがロウ付けされたフレームに応力を掛けっぱなしで使うっていうのは、生理的に受け付けない。エンドを4mm開くっていうのは結構な力がフレームに掛かるのである。ならば、OLD寸法を4mm詰める方が自然である。
・SORA
左側スペーサーの厚さが8.8mm。抜く事で121mmOLDが可能。
基本は、どれ使っても、どうにでもなるけど、一番手間が掛からないのは、SORAだ。スペーサーを抜く事で本来のバランスが崩れるのは妥協点だけど、崩れるバランスを前提にすると高級グレードは無用となると、必然的にSORAベースで作るのが手っ取り早い。
SORAのハブを使って8.8mmスペーサーを抜くとなるとセンター位置が4.4mmずれる。4.4mmはオチョコ量を増やす訳だが、そうなるとカセット側のスポークが相当に立ち上がる。立ち上がると、カセットのローギア時におけるRメカのゲージとスポークが接近し、下手すると干渉が問題となる。実際、ゲージのスポーク側プレートとスポークが干渉する。で、これを回避するには、安直にはゲージの干渉部位を削り込むのが簡単だけど、美しさに拘るとゲージ構造が片持ちタイプに交換する事だ。片持ちタイプ?っていうと、大昔の72系DURA、DURA ACE EX系のRメカに採用されたハッチプレートメカニズムって構造。Rメカのゲージを72系DURAのRメカのゲージに付け替える事で干渉は回避出来る訳だ。
こうすることで、120mmエンド幅のフレーム(実際は121mm程度の幅がある)に、OLD130mmのハブを改造し、ゲージを工夫することで9速化が可能となる。
次には、現行系の130mmハブのフレームにジュニアカセットを使用する場合。ジュニアカセットとフレームの干渉というと、カセットのトップギア時においてエンド近辺におけるシートステー、チェーンステーとチェーンの干渉が問題になる。そのために、自分のギア比が頭にあってカセットに何を使う?って前提でフレーム選びをする訳だが、そのフレームに求める要素は何か?が結構大事になる。
どんな工夫をするにしても、前段階で或る程度、先の考えを満たしたフレームを見繕う事が必要。昔ならオーダーフレームで細部の工作は指定できたけど、今は殆どフレーム買いからのセミオーダーであり、フレーム工作に個別指定は不可能だからだ。
フレーム選びで見る点は、想定するギアでの干渉リスクの考えだが、自分の場合は、
・チェーンステー、シートステーに入ったチェーン避けの潰し加工部の大きさ
・チェーンステーのシート下での合わせ方。集合ステーは避けたい。
・チェーンステーの形状。エンド近辺でカーブして広がる型は難しい。
・出来ればアクスル位置が調整可能なロードエンドが望ましい。
という4点。この4点はフレーム単品を見るだけで概ね判る。しかし、この四点を満たすとジュニアカセットが可能か?というと、そうではない。実際、普通にジュニアカセットをハブに入れてフレームと合わせるとトップ位置が実に厳しいのである。
で、トップ位置でフレームやエンドとチェーンの干渉を避けるには?となると、これはハブボディのセンターをずらす訳だが、先の視点でフレームを選んでいれば、センターオフセットの量が最小で済むのである。特に130mmエンド幅で10速のホイールというと、オチョコ量はデフォルトで結構大きいので、ハブボディーのオフセットは最小で済ませるのが理想的。因みにハブボディーのセンターオフセットは、芯棒のスペーサーの厚さ調整で賄うのだが、調整量は大きくても1mm未満が理想。
なお、ジュニアカセット使用の場合は、カセット本体がアルミ製が不可とのことで、選べるハブはDURA ACEか105となる。スペーサーの組み換えを考えると、ロックナットとスペーサーが独特なDURA ACEよりも105が好都合。
自分の場合は、105ハブの4.8mmスペーサーを4.0mmスペーサーに交換し、反対側に0.8mmワッシャをロックナット内に噛ませてハブボディーを0.8mmオフセットさせている。これで、トップ16T時でチェーンとフレームのクリアランスが1.5mm確保という状態で干渉を回避している。
最後に、カセットセットの歯数構成の変更の制限回避について。殆ど需要は無いかもしれないが、小径車に普及しているカプレオコンポについて。
カプレオは9速のカセットで歯数構成は、9-10-11-13-15-17-20-23-26Tという構成で小径車に使う場合でも11-13が非常に使いづらいのである。
そして、カプレオを組み換える人も居る訳だ。カプレオ組み換えでは13T以上が通常のコンポとスプラインが共用されているので、13T以降のリベットカシメを飛ばしてロード用、MTB用の歯を適当に組み合わせるのだが、その際に、12Tを入れる人が多いのである。
ところが、12Tは、カプレオの11Tと非常に相性が悪く、変速性能が劣悪となるのである。
これは、ギア板に成型された変速パターンが11Tと12Tで合っていないのが原因であり、これはロード用、MTB用の12Tを入手しても結果は同じであった。
そこで、カプレオ11Tの変速パターンと本来マッチしているカプレオ13Tの変速パターンを流用12Tのギア板に作成すれば問題は解決するのである。幸いな事にロード用の12Tは、変速パターンを作りたい歯自体がノンパターンで肉厚なためにヤスリで削りを入れる事で簡単に変速パターンを作り込む事が出来る。そうすると、カプレオをクロウスレシオ化する上でネックとなっていた12Tが作る事ができるのである。
まぁ現実的には、カプレオ9Tが実際に必要なのは、フレーム等の制限でチェーンリングの歯数が限られる場合か、ホイールサイズが18インチ等小さい場合で、多くの場合では無用だとは思うけど、、、、自分の場合は今は普通の9速カセットで11-21Tを使ってる。
ところで、こんな市販されていないギア比構成が必要か?というと、多くの場合は必要無いのだろうと思うけど、こういうギア比が欲しいという人にとっては、最近のコンポーネントは組み合わせの自由度が極めて少ないのが実状であるが、諦めずに考えれば、このような解決策も見つかるのである。
話が戻るけど、フルサイズにはジュニアカセットとかトップ14Tの9速カセットとかが具合がよい。トップ14Tならチェーンリングのアウターは48T以下が具合イイし、アウターリングが50T以上ならばトップは15T以上が具合良い。一番重くても展開で6.5m程っていうのが一番無駄がないと思うし、常用域の17~18Tでアウターリングでチェーンラインが真っ直ぐとなる。その前後でのレシオのクロウス度というと6%違い程度。自分の場合、120rpm以上という回転数で漕ぐ場合には絶対必要とも思えるところ。逆に90rpm程度で漕ぐならばレシオのクロウス度は10%程度で十分なんでジュニアカセットのような18T近辺でクロウスさせる必要もない。そんな風に、必然に合わせて欲しいモノを探すとなかなか見当たらない場合は、紹介したように目的に合わせたフレーム選定、パーツ選定、加工、工夫を行うのである。
そういう工夫が安価かつ簡単かつ手軽に行えるのが自転車の良い所。
思い起こせば、単車にクロウスミッションを入れるのも大変だが、下手すると、二次減速比さえ変えるのが難儀なモノも存在する。メジャーなスポーツバイクならスプロケは結構選べるけど、古くマイナーな機種の場合は、チェーンサイズ等の制約で結構厳しいし、CX-EUROのようなシャフト駆動車で減速比を変更するのは相当に大掛かりである。それに較べると、自転車、、、、、、オモチャみたいである。パーツをワンオフするにしても駆動トルク自体屁みたいなもので安直板金加工でOKだが、単車の場合はワンオフの場合は強度計算、流用の場合は、流用元の仕様調査も必要。製作も溶接か削り出しのどっちかだ。このお手軽感が自転車の最大のメリットかもしれない。
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