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2008年10月18日 (土)

一番大切なのは、、、

 自転車選びで一番大切なのは何か?って考えると、、、、、価格でも、重量でも、構成コンポのグレードでも、フレームマテリアルでも無いと思う。このようなパッと見で判る部分っていうのは、実はあんまり意味がないようにも思うのである。

 しかし、新興ブランド(歴史的に30年程度のブランド)のバイクっていうのは、そういう見た目の華やかさ、賑やかなスペックで人目を惹きつけているようにも見える。
 新興ブランドの殆どがアメリカブランド、そして台湾製ってところだけど、その辺りっていうのは、原則として、大量生産、大量販売が利益追求型工業系ブランド指針の根底にあるように見えるし、新興ブランドが競技の世界に入っていく上での武器は、伝統的な工房的ブランドの真似が出来ない分、違ったアプローチで世界を席巻しているように見える。
 工房系ブランドと新興ブランドの違いは、生産規模の違いも多いが、何よりも企業体としての体裁をフルに活用したサポート体制の充実度ではないか?と思うのである。これは、競技世界の話に限らず、趣味製品の販売網、サービス網にも繋がるものであり、その違いが新興ブランドの普及に大きな力を発揮しているんだろうと思う。
 特に、最近氾濫しているアメリカンブランドの隆盛は昔人間の自分から見ると、違和感アリアリである。ヨーロッパの伝統競技であるサイクルロードレースの機材に、極めて歴史が浅く、表面的な雰囲気でイメージ作りされたモノがカッコイイという価値観がまかり通る実態は強烈な違和感を感じる。
 車で言うと、飾り立てた大量生産型アメ車と伝統を大事にしたヨーロッパ車のような違いにも喩えてることが出来る。

 そんな新興ブランドの普及とCM戦略によるブランドイメージの確立から結構な人気を博しているようだけど、豊富なラインナップと大量販売戦略では、バイクでアピールするのは、やはり汎用的なコンポグレード、マテリアル、スペックに留まらざるを得ないのも真実である。
 しかし、伝統的なブランド、或いは、工房的なブランドは、基本は少量販売であり、バイクに与える特徴作りは新興ブランドのそれとは大きく異なるのである。

 本来的に、バイクの性能が判りやすいコンポグレードとフレームマテリアルのみで決まるのであれば、新素材の利用の速度を考えれば大量生産を前提とした新興ブランド以外に生き残れないが、現実は、伝統的なブランドや、工房的なビルダーは確実に存在しており、その生産性からみると割高であるにも拘わらず確固たる地位を築いている現実を冷静に判断すると、バイクの性能はコンポグレードとフレームマテリアルで決まるモノとは言い切れない事を示している。どんなに目新しい新素材であっても量産効果が期待できるのは間違い無いけれど、逆に、どんなに普通な素材であっても固有な数値設計では量産効果は全く期待できないもの。利益を追求しようとすれば、量産効果を狙った商品構成となるのは極当然の事でもある。その量産性=普遍性が、注文毎への高い対応度を叶える上で大量生産志向の弱点ともなる訳だ。
 特に、工房的なビルダーの場合は、生産者規模から極コンベンショナルな部材での製作に限られるが、それでも生き残るという現実は、フレームマテリアルやコンポグレードを超越する何かが存在する証明に他ならないのである。

 で、それが、実はバイクで一番大切なものだと、私は考えている。

 工房的なビルダーが出来て、工業的な新興ビルダーが出来ない世界というのは、乗り手に誂えたスケルトン(ディメンジョン)に他ならないのである。このディメンジョンの自由度こそが、工房的ビルダーの存在意義と言えるのである。

 しかし、工房的ビルダーでバイクを製作するにしても、そのディメンジョンや工作に注文が入れれないのであれば、逆に言えば、工房的ビルダーで最高の一品を手に入れる事は出来ず、汎用的な根拠の無いスケルトンを指示する程度ならば、それこそ、汎用的なディメンジョンを持つ新興ブランドの製品がお似合いなのである。

 一番大切なのは、自分の体型、乗り方、癖、好みに応じたスケルトンを指示出来る知識ということになるが、このスケルトン指定を完璧に納得できる形で行える人っていうのは、案外少ないように思う。
 殆どの人が、自分の身長からみたフレーム適応サイズをチャートから読んだり、或いは、汎用的な公式のような数値からスケルトン値を算出したりしているが、その程度では、ハッキリ言って工房的ビルダーでオーダーする価値は無いように思う。なぜならば、チャートや公式での数値は、身体の一部の寸法から求めただけであり、その数値さえ同じであれば、バイクは全て共通という事になる訳で、そこには乗り手の個性や違いが存在しないことになるからだ。

 で、重要なのは、公式でスケルトン数値を算出するので無く、公式を使わずに自分の身体を見つめ、自分のライディングスタイルを考え、自分の考えで最も理に適った乗り方を考えて、その考えを満たす固有の数値を計り、それをベースにスケルトンの数値を算出する事なのである。こうやって見出した数値こそが、サイクリストオリエンテッドな数値であり、それが思い通りに実現出来るのが工房的ビルダーによるバイクの真骨頂である。

 バイクが最高のモノになるには、そのサイクリストオリエンテッドな数値が、ライディングの理屈に完全に適合し間違いの無い論理から出される必要があるけど、実は、その部分が最も重要で手に入りづらいものでもあるのだ。これこそが金で買えない知識であり、自分が経験を積む事で、見付けていく真実であるのだ。

 因みに、自分は自分で考え出した、スケルトン数値の決め方を持っているが、その数値に近いフレームっていうのは、殆どがビルダー系のフレームの場合が多い。次いで、国産メーカーのモノ。一番理想から離れているのが新興ブランドのフレームだ。勿論、新興ブランドのフレームで各部の調整範囲によって取り敢えず納得出来る形は作れるけど、その場合は、妥協点が結構残ったりする。妥協が少ないのが国内品の事が多い。

 取り敢えず、自分の場合は昔から、フレームを見ると大体そのバイクが自分好みかどうか?が直ぐ判るのである。グッと来るバイクは、各部の寸法を計測すると、グッと来るスケルトンを持っている。ただ、このサイクリストオリエンテッドなスケルトン数値の計算は、四則計算と三角関数だけで求まる数値である。結構、小さな寸法、例えば、ステム長、クランク長もmm単位で計算出来たりするのである。こういう事を考えながら乗ると、そういう考えがまとまるのも自転車の楽しさなんである。

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