円安バブル
日曜日の中国新聞で、早稲田大学教授の榊原教授のコラムに表題のタイトルが付いていた。
それは、長きに渡る、異様な低金利政策による円安誘導のツケをこれから払っていく時代になる、、、、
同じ考えを持つ、著名な人が居るってだけで嬉しい!?感じ。自分的には、異様な金利差で円を調達し、海外で運用するって構図が、今回の金融破綻の一因となっているとさえ思っている。
そんな円安が恐らく終焉を迎える。これで、円安に胡座をかく日本製造業がダメージを受け、世界の不景気から時間差をおいて日本製造業を襲ってくるのでは?って思うのだ。
そんな円安、世界景気の恩恵を勤務先企業も受けてきた。勤務先も海外の特需に業績を伸ばしてきたのだが、それを次のように伝えている。
勤務先では10月が締めである。で、先期の総括と来期の目標を管理職会議とか朝礼によって経営者が従業員に伝えている。勤務先では、ここ十数年、右肩上がりの成長を続けており、ここ数年を振り返ると、過去最高の売り上げを更新しながら推移している。来年は、更に多く、史上最高の生産台数と売り上げを更新する勢いだ。
こんな状況は、経営者にとっては最高の喜びであろうし、従業員に対する感謝の意を表したい気持ちも良く判るけど、一歩下がってみれば、浮かれすぎか?とも思う程である。
過去の20年間を振り返る資料では、20年前、10年前、昨年を比較すると、売り上げ高は倍々ゲームで来ている。従業員規模からみても、その金額が10年で倍増するのは、或る意味驚異的でもある。その間、生産資本(従業員、工場、設備)は20年間でも2.5倍程度に留まっており、純粋に生産効率は著しく向上している。
ところで、製造品目の向け先別に区分すると、設備関連向け/運輸関連向け、国内け/輸出のような形で分けられるのだが、運輸関連向けは殆どが輸出品というのが特徴だが、この比率は、20年前は3/7、10年前は2/8、昨年は1/9と推移しているのだ。この比率を売り上げ総額に掛けて、金額推移を見ると、設備関連向けの絶対金額は20年前の金額を100とすれば、100×0.3=30、10年前は100×2×0.2=40、昨年は100×2×2×0.1=40となり殆ど変化していないのである。
更に、この向け先別の金額の変動幅を振り返ると、設備関連は隣接年度で変化が±10%以内の金額変動を見せていない安定的な売り上げである。これは、殆どが国内向けであり、国内市場における規模はほぼ一定って言う事だ。
一方で、運輸(輸出)関連は?というと、20年前が100×0.7=70、10年前が100×2×0.8=160、昨年が100×2×2×0.9=360と5倍以上に急増している。
因みに、運輸関連は過去20年の隣接年度での変化が最大で±50%の変化がある不安定な要素を持っている。運輸関連は殆どが輸出機器であるのだが、最近の異様な需要の増大は、中国市場の拡大もあるけど、世界景気による牽引力も相当に大きい。更には、収益力は昨今の円安政策の恩恵に与る部分が極めて大きいのである。
この最近の収益力は、先の円安バブルによる恩恵が極めて大なのだが、それを認識してかどうかは知らないが、ここ最近は、生産資本の増強を繰り返している。隣接土地の買収、工場建設、派遣労働者の増強等々、、、、こうやって増やした生産資本は、本来は企業の本質的な実力向上というよりも、海外特需によるものだが、需要は急減しても生産資本の急減は出来ないもの。
輸出関連品目は政策バブルによる恩恵で今があるとすれば、将来は、過去の分析に従うと変化としては下げる確率の方が大きい。仮に、最大の下げ幅で-50%となると、360×0.5=180ということで、設備向けを40とすると40+180=220(20年前を100とすれば)に陥る可能性をはらんでいる。
過去の売り上げ、利益を見ると、一人あたりの売上高で一定金額が無ければ収益が上がらない境界があるけど、今の人員、生産資本で、その境界金額を乗ずると、最低でも250(20年前の売り上げを100とすると)は必要。しかし、220になるリスクが在る訳だ。最低でも220-250=-30程が不足する。この不足の30分を生み出す(市場開拓、或いは、市場占有率アップ)戦略が必要なのではないだろうか?
特に、昨今の急激な需要増による特需は、新興諸国の経済発展、世界的な好景気によるものだが、それが減速期に入ると果たしてどうなるだろうか?
先代の経営者は、どんな状況であっても5年後、10年後の最悪のシナリオを予測して、先手を打ってマーケットに製品投入したり、社内における体制、製品の変革を常に行っており、その必要性を説いて社員の志気を高める采配を揮っていた。
しかし、現在は、ここ数年の好調を振り返るだけで、数年後のシナリオを予測した指揮を執っていないように見えるのが、とても、とても、不安な感じである。
良かった過去を振り返るのは一瞬で良い。実績にしろ、何にしろ、済んだ事は済んだ事。大事なのは今後の筈だ。せめて、先代の如く、未来を見据えた指揮を執るべきだと思う。果たして、先代から引き継いだ今の経営者は、どのような才覚を発揮するだろうか?
このブログ、社内からも結構見ているらしいので、休日に更新されるように、あんまり見られないようにアップしてみたりする。
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