疾病の原因はホント?
今の世の中、健康志向である。健康志向の価値観の中では、肥満、喫煙、飲酒という世間で言われている習慣自体が悪習慣として敵対視されている。
この方向は、最近のメディア、報道、社会、、、、、全てに於いて認められる傾向である。
しかし、そうとは思いながらも、煙草なり酒なりが人類固有の文明の産物として存在しており、そこには確実に必然性があるとも考えられる。
このような因子を存在悪と決めるのは簡単だが、歴史的にそういうモノが生まれた背景を考えるっていうのも、本当は必要なのではないか?と考えたりする。
ところで、そのような存在(酒、煙草等)、状態(肥満)が全否定され、それを解消する事が重要という価値観の啓蒙が盛んなようだが、その根拠は何かと振り返ってみると、、、、
例えば、肥満と糖尿病の因果関係では、どうか?言える事は、生活習慣の変遷で肥満に陥った人が結果的に糖尿病になったという事実がある場合は、糖尿病の治療は肥満解消にあるといえる程度であり、肥満が即ち糖尿病に直結するとは言い難いのでは無いだろうか?って事。
実際、糖尿病の有病率の統計を見ると、有名な数字が40~74歳なら4~5人に一人が糖尿病(予備軍を含む)というデータがある。そして、糖尿病患者の多くが肥満となっているという傾向がある。
しかし、それが肥満だから糖尿病であるという論理には必ずしも結びつかないとも言える。
糖尿病の有病率のデータには年齢別のデータをあるが、例えば、世代別の糖尿病(予備軍)の有病率(%)がどうなっているか?っていうと、
男性 女性
40~49歳 4.8(9.2) 2.2(11.0)
50~59歳 13.1(13.1) 8.2(12.6)
60~69歳 14.7(14.4) 12.8(16.1)
70歳以上 21.2(14.2) 15.3(19.0)
40~74歳 14.3(12.8) 9.4(14.3)
である。これって、純粋に加齢と共に有病率が高まっているという傾向である。では、肥満人口率(%)の年齢分布はどうなっているか?を調べると
男性 女性
20~29歳 17 6
30~39歳 31 10
40~49歳 31 18
50~59歳 34 25
60~69歳 30 33
70歳以上 25 30
となっている。40歳未満の糖尿病統計が無いからそれ以外の年齢で比較すると、糖尿病の発症が予備状態からの経過年数が発症の引き金になるとして、発症が著しいのが50歳以降というのが認めらる。ここで興味深いのは、肥満状態が減少する60歳以降でも糖尿病状態は加速度的に増加している状況であり、そこには肥満状態との因果関係を見出そうとすれば、肥満状態を20年程度持続した結果がタイムラグを持って糖尿病として発症するという見方が可能であるけれど、より単純に見ると、糖尿病というのは年齢に応じて増加しているが、肥満はその限りではないということ。
もっと言えば、肥満になれば必ずしも糖尿病には結びつかないとも言える。敢えて言うならば、前述の通り、肥満化によって糖尿病になった人は、肥満が原因と言えるかもしれないということ。
似たような例では、COPDと喫煙習慣の関係でも興味深い傾向がある。説明によるとCOPD患者の90%がCOPDを患っているとされている。ところが、喫煙者がCOPDになるか?っていうと、、、、喫煙者(経験者含む)の率から言うと12%程がCOPDになるという一方で、非喫煙者の5%もCOPDになっている。これから喫煙習慣がCOPDの発症加速要因とはいえるけど、それが全てとは言い切れないのである。
そこで、COPDの年齢別有病率(%)をみると、
40~49歳 3.1
50~59歳 5.1
60~69歳 12.2
70歳以上 17.4
40~74歳 8.5
となっている。これも喫煙習慣を継続した結果に発症するという見方が自然であり、その説は、ブリンクマン指数等でも導入されている考え方で理解するか、或いは、これも加齢による傾向と言う事も出来る。
なぜならば、COPDの有病率が非喫煙者でも5%弱存在するということは、少なくとも60歳未満でのCOPDの有病率の数字を見る限りでは、最長でも40年未満の喫煙習慣ではCOPDの有病率に差異は生じていないという事でもある。
毒物の習慣的摂取による害の蓄積という見方で判断しても、有病率の急増を示す60歳以上という年齢から、喫煙習慣で40年以上がCOPDを導くとしか言えないのではないだろうか?少なくとも、逆の見方をすれば喫煙者であっても総合で有病率は8.5%に留まるという現実は、喫煙行為が誘因要素であったとしても、その他の要因が多く存在するという裏返しでもあるのだ。
肥満による代謝異常、喫煙による肺機能低下というのは事実として認められるが、肥満でも最低で肥満状態を20年以上、喫煙ならば40年以上の蓄積の上でという限定的な範囲でしか因果関係は無いのでは?というのは、楽観的すぎるであろうか?
少なくとも、加齢による有病率増大という部分では明らかである。但し、この加齢による変化というのが、生物学的に不可避な機能低下的な衰えからくるものなのか?或いは、高齢化に伴う生活習慣の変化による機能喪失によるモノなのか?というと判断が付きにくい。
何故ならば、70歳以上、80歳以上でも驚く程の張りと艶の肌を持つアスリート系高齢者が存在しているのも事実である。世間的な高齢者の衰えとういうのが、本来の宿命的な衰え以前の生活習慣による衰えの加速という部分が相当にあるかも知れないというのが最近の感想である。
それ故に、先の疾病の有病率の発症というのは、高齢化にともなう生活活動度の低下による代謝低下や怠慢生活による身体機能の休眠化によって高まっているかも?という気がしてならないのである。
勿論、寿命が存在するというのは判るんだが、人体器官で最初に完成し、細胞新生が行われない脳細胞でさえ120年程の寿命を持つと言われており、せいぜい40年程度で身体機能が顕著に摂理的に低下するというのは納得出来ない部分であるのだ。
そういう訳で、現代人を蝕む疾病の本当の原因は何か?というと、何らかの原因が複雑に絡み合っているんだろうけど、実は特定しきっていないのでは?と思うのである。
偉そうに、原因が何だ!と特定するならば、一般に言われている奇跡の回復って事は有り得ない訳であり、奇跡というのは、前例が無いというに過ぎないというか、多くの人が見たことが無いだけの話。それ故に、疾病には既知の常識の何かが関連しているのは事実だが、やはり確定的に言える事は何一つ無いのである。
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