スズキもWRC参戦休止!SX4のMTの芽を摘んだ自動車不況
自動車産業の景気減速が鮮明だ。
結果、自分的に最も懸念していたのが、ふざけている訳では無いけど『スズキSX4もMCにおけるMT追加』の芽が断たれるのが確実って事。
SX4においてMTの追加を期待できたのは、SX4によるWRC参戦である。JWRC参戦とスイフトスポーツの相関の如く、SX4もWRC参戦イメージが定着すればMTモデルも出る可能性が在るという淡い期待だったわけだが、WRC参戦を取りやめると、イメージを高める必要性自体も存在しない。そもそも、本来の成り立ちがフィアット姉弟車が象徴的なように、便利でコンパクトなマルチパーパスビークル故に国内でスポーツイメージを高める必要性すらないのが現実だからだ。
自動車産業の中では、北米での高級車需要への依存度が少ないスズキでさえ、経営資源の集中という名目でWRC参戦を休止する。チョイ前では、ホンダがF1完全撤退が発表されたばかり、トヨタのモータースポーツへの取り組みは今のところ報道は無いけど、いすずと共同で開発していた新世代ディーゼルエンジンの開発見合わせ、そのエンジン製造を担う新工場建設も白紙化ということ。トヨタ自体も利益が上期の好調な業績から一転し、下期では大幅な減益予測を経て、再度の発表では赤字転落、役員賞与カット、更には工場の週休三日制導入と不景気な話が続いている。
勿論、最近メディアで取り上げられる非正規雇用労働者削減による問題も叫ばれているが、非正規雇用労働者の削減でも足らずというか、それが不可抗力であるかのようなアピールか実態か知らないけど、新たな投資計画の凍結、モータースポーツ活動の休止や撤退が次々と発表されている。最新の報道ではスバルもWRCから撤退という、、、
国内の自動車産業関連が生み出す雇用は、国内の全雇用の7.9%を締めるが、自動車産業と同じ構造で利益を上げる家電エレクトロニクス関連における全雇用も相当な割合を占めている。この両産業分野における雇用の膨張と収縮が経済指標に大きな影響を与えているのが現実である。その経済指標に与える影響度の大きさから、不景気、不況の報道を繰り返すことで、消費者心理に影響を与え、マンション販売等不動産関連から、小売り、サービス業等の一般消費者の消費行動に支えられる産業に波及しているようである。
逆に、その分野から離れた産業では、報道における不況の実感が正直沸かないというのも、あちらこちらで聞く話であり、この辺が不思議な感覚である。
ところで、何故にこのような事態を招いたか?を考えると、、、、非正規雇用労働者の受け入れによる生産能力アップで賄える商品を主力商品に据えたのが大きな原因と言えるのである。つまり、即効性のある労働人口アップで生産能力アップが見込める商品というのは、商品自体が既存の価値観の延長で出来ているという証であり、そこには、本当の付加価値を加えるという加算の論理で製品開発が為されていないモノを高級と印象づける構造があるからである。売り手側からは、印象的な高級に誘導するような宣伝を打ち、買い手側は、その宣伝された高級を高級と受け入れるような価値観しか持ち合わせていないのが、急激な、ナンチャッテ高級市場の膨張を招いたようにも見えるのである。
レクサス、アキュラ等新興ブランドの高級車の根幹は従来品+イメージで出来たモノで、本当の高級より手軽で買いやすい高級。大画面の液晶、プラズマ薄型テレビも似たようなもの。出始めの薄型テレビとは違うもの。このようなナンチャッテ高級ってモノは、実は、何処でも作れるモノだが、それを円安という価格競争力を武器に売りまくって上げた利益や豊かさを基準とした錯覚が、そのナンチャッテ高級市場が無くなって元に戻っただけの状況を激しく落ち込んだ不況と錯覚しているように見える。
大規模な非正規雇用労働者削減という前提には、急激なナンチャッテ高級市場の膨張に併せた非正規雇用労働者の大量採用という前段が存在しており、言ってみれば元に戻っただけとも言えるのである。
今回の金融危機では国外市場の消費マインドの冷え込みによる輸出産業の体力消耗と、輸出製品の製造を司る国内の雇用調整による不況というものだろうけど、本当の不景気、不況というのは、これからやってくるのだろうと言える。
最近の記事にも繰り返し記載しているけど、歪んだゼロ金利政策による潤沢な資金供給を背景とした量的緩和政策で誘導した円安で、新興諸国の製品に対して有利に立っていた輸出品が、新興諸国製品の進化と、金利差の消滅による円安誘導の終焉により、外貨獲得の唯一の手段である輸出製品には本当の競争力が求められる時代になる訳だ。
その競争力は価格が安いだけでは、勝負できなもの。
本当の高級という分野では欧米各国と競わざるを得ず、既存分野では、中国、韓国といった新興諸国と競わざるを得ない。仮に自動車産業で高級を狙うならば、似非高級のレクサス、アキュラでは駄目だろうし、家電エレクトロニクスの花形である大型の薄型テレビというだけでは駄目だろう。新興諸国では対応出来ない、ワンステップ上の価値観で製品を生み出す事が出来なければ、本当の不況に陥るように思うのである。
そういう意味で、イメージ戦略の象徴であるF1撤退とかWRC撤退というのは、企業として正しい判断とも思えるのである。
恐らく、SX4もMTに限らず、雑誌スクープを賑わせていた華やかな高級車、スポーツカーの多くは見直しの対象になるだろう。
取り敢えず、言えるのは、やはり強引な円安誘導を招いた好況時にも続けられたゼロ金利政策、量的緩和政策である。それを希望したのも産業界だが、或る意味、経営者の自業自得とも思えるところである。結局、経営者、政治家の判断が時代の流れにそぐわなかったのが原因で、それが原因による不景気は、今回の金融危機での不況の次に確実にやってくるだろう。円高で乗り切れる体質に作り替えることが今求められていることの筈だが、何故に、未だに円安誘導を試みるのか?が、とても不安になるところである。
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