植物乳酸菌がピロリを撃退するかも!?
連休中に深夜のローカル放送のドキュメントで表題のような研究を紹介していた。
これは、広島のヨーグルトメーカーと広島大学医学部の共同研究で植物乳酸菌がピロリ菌を撃退するのに効果があるという研究結果を紹介した番組である。因みに、開発商品はコレ↓
この開発の発端は広島大学の杉山教授によるもので、教授とヨーグルトメーカーの研究者の会話から生まれたモノらしい。
発端は、教授のヨーグルトに酒粕を入れると面白いかも!ってアイデアを聞いた研究者の方が、早速実験しヨーグルトの発酵時間が酒粕によって1/3に短縮されたという実験結果を教授に提示され、その話に教授は、酒粕に乳酸菌の発酵を助ける因子があると考えたそうだ。そこで、植物乳酸菌で固形ヨーグルトを作ろうという発想が生まれたという。
因みに、乳酸菌とは糖を分解して乳酸を生成する菌の事で、動物の乳に居るモノを動物乳酸菌といい代表的な発酵食品がヨーグルトであり、植物に居るモノを植物乳酸菌という。この乳酸菌パワーで得た食品が発酵食品であり、味噌、キムチ、テンペが該当するのである。
基本は同じ効果を与えるのだけど、大きな違いは植物乳酸菌は菌の環境耐性が極めて強いのがメリット。動物乳酸菌は酸や塩分に弱く、ヨーグルトの場合は普通に食べても胃腸に届きにくいというデメリットがあるので、その点が大きく違う。植物乳酸菌の場合のデメリットというと、結構、癖の強い食材ということで、味噌、キムチなんかは良い例だ。
人間が食べやすいのは動物乳酸菌、でも効果的に利用しやすいのは植物乳酸菌というのが乳酸菌界の常識。更なる常識は植物乳酸菌では固形ヨーグルトが出来ないというのも既存の常識。この話はダイエット関連でネット検索すればヒットしまくる話だ。
これが常識なのだ。
このような常識に挑戦されたというのが杉山教授の発明のポイントであり、杉山教授は乳に酒粕を添加することを提案したのが発想の発端で、植物乳酸菌でも酒粕を使えばどうにかなるか?って期待を持つに到ったそうだ。その結果、ベースとなる植物乳酸菌の選定では、ニンジン、ナシ、桃、ぶどうを始めとする40種類以上の野菜や果物から分離した植物乳酸菌を用い数百回の実験を経て「植物乳酸菌による固形ヨーグルト」を生み出したそうだ。
この研究では、ニンジンから分離した植物乳酸菌を、広島産みかん果汁と少量のグルタミン酸を添加して培養すして、GABA(血圧降下作用や抗ストレス作用があるアミノ酸の一種)が大量にできる事も突き止め、GABA入りヨーグルトも開発され、更には、最近、ピロリ菌増殖を効率よく阻害する物質を産生する植物乳酸菌を見つけられたそうだ。
そういう事で、将来、胃ガンの原因とも言われるピロリ菌を本当に撃退できるヨーグルトも生まれるかもしれないのだ。
この話で心に響いたのは、一般の常識を覆すべく数百回の実験を行われたと言うところ。
自分も似たような経験があるのだ。それは、超硬合金と言われているWC(タングステンカーバイト)を基材とする硬質材料の開発において、材料製造プロセスで必須のバインダーであるコバルト、ニッケルを全く用いずに焼結するというトライに数百回の実験を行った事がある。現在市販されているバインダーレス超硬合金といっても必ずや少量のバインダーであるコバルトやニッケルが含まれているのだが、実は超硬合金の欠点は、コバルトやニッケルを加える事で硬くて強い材料が作れる反面、硬質の炭化物材料でありながら非常に腐食されやすいという欠点があるのだ。それは、少しでもニッケルやコバルトが入っていると現れる性質で、これを減らすと強度が下がるというジレンマを抱えた材料なのだ。
このジレンマを超越するために、金属であるコバルト、ニッケルを全く用いずに超硬合金を固める方法を探すのに数百回の実験を殆ど一人で行ってきたのだが、その事が、このヨーグルトの話で、ふと思い出した所である。
因みに、コバルト、ニッケルを全く、完全に用いない焼結では、Mo(モリブデン)系、Si(シリコン)系の化合物を用い焼結させる方法で、足らない強度は少量の酸化物系セラミックスを添加させて析出強化させたのだが、なんか、イメージ的に繋がるなぁって思ったので、敢えて記事にしてみたのだ。
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