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2009年6月20日 (土)

誰のため?

 過去において、非常に特殊な硬質材料の開発に携わってきた。
 その目的は?っていうと、耐食性、耐摩耗性を両立する摺動材料を得るためである。その摺動材料の開発を終えて、耐食性、耐摩耗性を持つ材料の開発は一段落した。

 その後、この摺動部品の用途、使用環境が変化して、これに加えて気中運転、無潤滑摺動運転への耐性が求められるようになってきた。

 但し、この摺動部品は部品であるから使用が想定される機械が存在するのだが、そのターゲットとなる機械自体の担い手が変化しているのが頭が痛いところ。

 本来、耐食耐摩耗用の機械への想定部品だったのだが、その想定していた機械における使用は行われず、細々と行われてきた基礎研究に対し真摯に採用を検討してくれた組織というのは、残念ながら当初耐食耐摩耗用で考えていた機械を担う組織とは別の組織なのである。

 本来、摺動というモノ、組み合わせが重要なのだ。一方だけを開発しても、本当はダメなのである。
 そういう意味で、最も初期に行った開発作業というのは、一方の材料開発に留まり、相手材は従来品を使ったというのが、不味かったのである。

 不味かったっていうのは、耐食耐摩耗用途で開発した材料が、想定外の無潤滑環境に曝されて一気に壊れるという事態である。
 この想定外における破壊形態の制御等のフェイルセーフ、危険予知等が不十分故に手痛い代償を払う事となったのだ。手痛い代償とは、開発業務の中断と言う事である。

 この業務の正式中断の後の開発というと、殆ど自費的に趣味的に行ってきたのだが、その辺りの雰囲気は規模と内容こそ違えど、マツダならロードスターの開発、RX-8の開発が有志で行われた結果という雰囲気に近いモノである。

 その自費開発に経費でなくモチベーションを与えてくれたのが、この材料の将来を期待してくれた?であろう別の組織の技術本部、開発本部なのだ。勿論、その組織にも利害を呼んで利用したいという目論見は有っただろう。その目論見が組織外の別の人間を利用しようと判断した背景には、摺動に関する難しさで、彼らなりに壁にぶつかっていたというのは他ならないのである。
 そして、その壁というのが、摺動の世界ではナンセンスな無潤滑摺動、気中摺動、先行待機運転という非常に厳しい使用環境に耐えうる性質の保持という部分なのだ。

 その後、耐食耐摩耗性硬質材料の開発の後に、この材料の特性を最大限利用し、システムとして無潤滑摺動、気中運転、先行待機運転に耐えて、万が一の破壊においても部品が形状を原理的に失わない構造を発案し、その第一弾を自分の所属する組織外のモチベーションを与え続けてくれた組織の製品に展開したのだ。

 この摺動部品は、耐食性、耐摩耗性は勿論の事、無潤滑摺動、気中運転、先行待機運転の全ての状況において従来製品では為しえなかったレベルの性能を提供しているのだが、ジレンマとして、開発の発端である退職耐摩耗性の硬質材料、所謂、自主開発セラミックスを用いる上で逃れる事の無い欠点も持っているのだ。

 その欠点を何点か上げると、、、、、最大の欠点は、スケールアップが極めて難しい事。他には、摺動システムの論理であるトライボロジーの理想条件からは絶対的に異なる構造となっていること。他にも、数点の問題が存在する。
 勿論、その欠点を今販売代理店を通じて販売している状況では、こんなブログで明かす事は出来ないが、開発者故に理解する致命的な欠点が確かに存在する。
 勿論、この用途に提案されている他者の手法にも同等以上の大きな欠点が存在するのは言うまでもない。それは事実なのだ。

 それでも、実際に開発したシステムが非常に大きなエンドユーザーに納品されて、社会的に大きな話題を提供する案件を抑止するための機械に組み込まれて実際に稼働しており、他者システムを制して後発ながら採用されているのは、技術的に現段階でも絶対的なアドバンテージを有しているからでもある。

 それを踏まえて、これから先の事を数年前には予測していたのも事実であり、今の最新のプロトでは、既存の特殊セラミックスを用いた方法とは全く異なる手法で、今抱えている欠点の殆ど全てを克服したニューシステムの開発に漕ぎ着けたのである。
 そのシステムは実際に普及させてこそ価値があるのだが、このシステムの権利を如何にして、どういう理念に従って世に出すか?これが悩みの種である。

 但し、この新しいシステムは従来のシステムのメリットを全て無価値にする程の性能であり、これをどうするか?が問題なのである。
 所属しながらも公式的には開発を断念した組織の製品にアプライさせるか、或いは、個人的なモチベーションの供給元として自分の発案を実際に世に出してくれた組織の製品にアプライするか?はたまた、ニューシステムの権利、製造を何処に任せるか、或いは自分で保つか?その辺が悩みの種だ。

 可能性的には、、、、一段階前の製品でも実際に世の中に出す事に注力してくれた組織を普及の起点にしたいと考えている。言いにくいが、仮に所属していたとしても、それを断念した組織には、やはり使わせる気持ちは毛頭無いというのがホンネだったりする。

 話は変わるけど、このニューシステムと組み合わせる第2段階の部品開発における知見や知識が複合材料関連のモノであり、この辺が自転車がらみの戯れ言の根拠だったりするのである。

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