フレームの好み
最近のトレンドは、ハイドロフォーミングのような方法による断面形状の異形化を進めたアルミ材を代表とする金属フレームとか、カーボンパイプをラグで固定したカーボンフレーム、或いは、一体成型で作ったカーボンモノコックシャーシばかりである。
嗜好品系としては、クロモリホリゾンタルなラグレスとかラグドフレームとかも確かに存在するけど、どちらかというと少数派。
普通に自転車を買おう!って思った時にカタログを開いて目に飛び込むのは、前者のカーボンモノコックを最高峰に、カーボンフレーム、アルミスローピング異形材という序列で完成車が販売されている。
後者の標準サイズ鋼材を用いたホリゾンタルフレームの場合、完成車というよりも、フレーム売りで必要な部品をチョイスするというパターンであり、どちらかというと面倒臭いという意識が働き気味なのは間違いない。そして、鋼材系フレームの舶来ブランドは、基本的にはとても高価であり、恐らくは普通の人の一発目としては購入の対象にならないように思う。
現実的な範囲、つまり上限でも30万円程度の完成車を買おうとした時、ユーザーが見るのは、ラインナップされた完成車と組み付け価格参考例として等価な鋼材フレームというと、ブリヂストンアンカーかパナソニックという選択になるのが普通だ。
そういう状態で、どっちを選ぶ?雑誌を情報源として見て、どう?って想像すると、、、、 やはり、ツールを制したTREKとか、伝統の○○チームが使うスペシャライズドとか、或いは、歴史に彩られたデローザ、コルナゴ、、、、というのがカッコイイというか、名前を知らないで初聞き故に、カッコイイ印象を持つだろう。
同じ値段で、ブリヂストン?っていうと、タイヤ?ママチャリ?ってブランドイメージが先に来ているだろうし、パナソニック?っていうと、デジカメ?テレビ?DVD?冷蔵庫?ってブランドイメージが先に来る。
実際、買った人が第三者に言う時、これ高いんでしょ?って聞かれるのは、素人に馴染みの無いブランドで、効かれた時にイタリアブランド!とかアメリカブランド!って答える方が得意になるものだろう。パナソニックって書いてあっても普通の人は、ふ~ん!で終わりだ。
そういう訳で、多くの人が完成車の舶来ブランドを選ぶのが普通なのは判るし、その物がメジャーを占めている世間の評価が示すように良いモノというのは理解できるんだが、天の邪鬼というか、70~80年代的な自分は、どうしても無意識に普通のフレームに触手が動くのだ。
自転車は何でも一緒という持論がある一方で、どうせなら少しでも良い方が良いという願望があるのも事実。相反する気持ちの落とし所で物選びをしているのは、多分、誰も同じだろう。そういうところで、どこに僅かばかりの良さを求めるか?っていうと、、、、自分の場合は、やはり簡単に交換できない主たるパーツ、フレームに目が行くのである。
そして、フレームに目が行って、フレームの何処を見るか?何を想像するか?っていうと、そのフレームはどんな人、体型向きか?を最初に見る。まず、見るところは?というと、トップ長とシート角なのだ。その基本が要望に合えば、順に、用途に応じてシートパイプ長を見たり、ヘッド角、ハンガー下がり、フロントセンター、リアセンターを見るという順番である。
そうすると、、、、不思議な事に国産のフレームばかりに辿り着くのが面白いところなのだ。
他の選びポイント?としては、そのような骨格に加え、後は、自分の乗り方に併せたギア比構成を組む時に干渉のリスクの少ない組合せはどうよ?って見方で細部を決めていく。まぁ、具体的には軽いギアが組めるか?ということだが、シートステー、チェーンステーとカセットのトップギアの干渉が最初に思い付くところ。組む前に買う訳だから、予めリスクを予防するような加工の有無を見る。具体的には、ロードエンド?シートステーは寄せステー?巻きステー?ステー端の潰し加工はハブセンターから何ミリまで?とかを見る事が多い。
スプリント系ならフレームハイトは低めにして、サドルとバーの落差が取れるようなデザインを好むし、ロングライド系ならば、ダイヤモンド構成パイプ長を長くして振動の周波数が大きくなるようなシートパイプ長の長いものを選ぶ。
ホント言えば、フロントセンター、リアセンター、ヘッド角、オフセット等々も小さな拘りを言えばよいのだろうけど、其処まで拘ると、見掛けたフレームを買う!って行為が実質不可能となり、其処まで言うと、一品モノのフルオーダー以外有り得なくなる。更に言えば、其処まで拘るような感性と知識は持ち合わせていないので、其処までは言わない。というか、言えない。敢えて言うならば、見た目の問題で、フロントセンター、リアセンター共にタイトにしたいというのが好み。ブレーキアーチは当然、ショートオンリー、ブレーキアーチ下のタイヤとのクリアランスは小指一本以内というようなタイト感が好き。そんなのが好みである。
後は、自転車というのが自分の中では、新しいモノほど良いというベクトルに無いモノという位置付けとなっている。工業製品なら新型程最良という図式になるんだろうけど、自転車でも特にフレームに関しては、その図式を好まない。古くても関係ない。古くても、先の要件を満たしているかどうか?が重要で、更に言えば、得たモノが簡単に手に入らないという希少性も所有欲を擽るポイントだ。希少性というと、モノの歴史的背景、歴史についても、競技に対する工作的な特徴を発揮するとか、素材や材料的な面から名声を得たモノとか、色々あるだろうけど、そんな特徴が自分の好みに合うかどうか?も大きなポイントとなる。
ここ最近手に入れたフレームは全部そんな感じ。
・シルクピストフレーム
これは、ユーテクティック低温溶接という特殊なロウ付けと二枚肩という独特なフォーククラウンを採用し、当時、国産で唯一競技に耐えうる性能を実現したというオリジナリティー溢れるフレーム。二枚肩+ユーテクティックロウ付け以外のシルクフレームより魅力を感じる一品。
・ステンレスロードフレーム
何と言っても、自分の知らないステンレスパイプのフレーム。それに尽きる。基本はラグレス、集合ステーという構成で極めてシンプル。接合部(パイプとパイプ、パイプとクラウン、パイプとエンドの全ての接合部)の研磨は鏡面状態で継ぎ目はシームレスに近い。見ただけでオーラを感じるほど。これ程の仕上げを見た事は無い。
・小林レイノルズ531ロードフレーム
やはり、70年代の最高峰、定番のマンガンモリブデン鋼レイノルズ531に尽きる。これを東叡社と深い繋がりのある小林氏が製作したフレーム。小林氏の手掛けたフレームはTTレースで日本記録を出した事もあるが、そんな方が手掛けたフレーム。定番のボカマラグ、ゼウス2000のエンド、クラウンのみならず、パイプ端部の処理にも手抜き無し。トップ長が短く、シート長が長いという独特なスケルトンも好み。
・BSクロモリロードフレーム
80年代末期のマスプロメーカーブリヂストンのリリースした中級のクロモリフレーム。パイプ材はスタンダードなカイセイ4130-022という、昔でいう石渡022と同じパイプ。目的は、前述の独特なホリゾンタルフレームに対するベンチマーク的な意味で調達。これが普通のクロモリホリゾンタルだ。敢えて、これを選んだのは、シートステーの寄せ方、端部の潰しの度合からジュニアカセットが入る!という確信を得たから。そうでなければ選ばなかったと思う。
こういう選び方見ると、完全に、懐古系オッサンそのものっていうのが良く判る。まぁ、仕方ない。
こういう序列に入らないフレームとして、アルミの極太パイプを用いたスローピングフレームのラングスターがそうだが、この自転車、完全に健康器具状態。嫌いでないけど、コレでなければならない!という拘りもない。乗った感じが悪いとか良いとか、そんな意識も作用しない。こんなモンだ!という意識で完結している。自分の中では、自分の自転車を貶すのも気が引けるが、それでも汎用のゴミみたいなもの。ダメになれば、次行こう!って感じのモノにしか見えない。或る意味、道具に特化しており自転車を道具として捉えればこれ程優れたモノも無いのだが、所有による愛着以上の拘りというのは案外少なかったりする。実際、自分が乗るには、シート角も寝気味だし、トップ長も長い。そのために、シートを若干前気味で固定してバランスを取っているけど、それ故に何だか格好悪い。そんなもんだ。
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