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2010年5月13日 (木)

通電焼結のアイデア紹介

 来月から研究室の焼結炉3台の内、二台の炉体を交換する。一台は抵抗加熱炉、一台は誘導加熱炉である。交換しないのは通電加熱炉だ。

 さて、この通電加熱炉、結構、検索で訪れる方が多い。アドレスを見ると、他県の工業技術センターであったり、自動車メーカーのトヨタのIPだったりする。

 この通電加熱路、実は、地元広島の開発途上の製品を購入して、それに様々なモディファイを加えたモデルである。
 通電焼結炉っていうのは、焼結における昇温を電気抵抗による加熱で賄うもの。そして加熱するのは何処?っていうと、これは、実は焼結粉体でなく粉体を装填する黒鉛モールドなのだ。

 通電焼結炉で放電焼結炉っていうものも存在する。これは、粉体上下の黒鉛パンチ間に電気を流し、電流にパルスを与える事で焼結粉体を加熱昇温を促進するというもので、基本は、粉体に電気を流すって前提の装置だった筈。

 でも、実際に運用すると、粉体に流れる電流は僅かで、モールド黒鉛を迂回する電流の方が圧倒的に多い。これは、実際に実験して確認した事。

 そういう世界だけど、最近、何故か通電焼結って言葉で検索する人が多いのだが、これは何だろうか?
 この世界からチョット離れているから知識的には古いけど、自分で作った通電焼結炉はチョット面白い構造だ。
 これは、粉体装填するモールドから見てXY方向+加圧軸のパンチ方向だからZ方向の3軸で加熱を行えるようにしている。

 当初は、3軸のそれぞれを独立して制御していたけど、今は、3軸だから6極だけど、その極間抵抗を監視して、抵抗値が下がる軸の通電をカットして抵抗値の大きな極間に電気を流す制御を加えている。

 これは、極間抵抗が大きいというのは、その方向の電気の流れ道が狭いという考えに基づき、その方向では粉体内部を横断していないという判断に基づくのである。
 つまり、その方向では粉体ネックの成長が不十分であり、ネックの接続が進めば電気が流れるのだけど、抵抗が下がれば、その方向に電流を突入させると溶融するので、抵抗が下がれば、抵抗が大きな極間で電流の向きを変える事で、局部のネック溶融を防ぎ、ネック接合の不十分な箇所での焼結を進めようとする考え方だ。

 放電焼結、パルスシンタリングとは異なるけど、極間抵抗監視型の電流スイッチングによる温度分布制御可能な焼結システムなのだ。
 これを利用すれば、材料内に意図的な温度勾配が設ける事が出来るので、傾斜機能材料を複雑な三次元形状、例えば、中心が低融点、外部が高融点というような三次元配列の傾斜材料も作成可能なのである。

 焼結炉の制御自体、発展途上だけど、新しい材料を創造するには、製造装置の革新が絶対に必要なのだ。折角、このサイトに訪れた人にとって少しでもメリットになればと思い、一つのアイテムを紹介してみた。

 自分的に終わったネタを定期的に紹介するのも面白いかも知れない。非鉄金属の冶金技術、三次元データの活用事例、有機無機接合、炭素系複合材料、セラミックス、センサー監視技術等々も紹介する予定だ。

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コメント

材料の複合化では、要素材料の物性が様々ですから、完全に均等なプロセスでは複合化出来ない事が多々あります。
複合要素の部位毎に操作条件を変える事が出来れば夢の複合材料も出来る訳ですね。
その各部の状況を検出するのが、温度だったり圧力だったりするのですが、通電装置の場合は抵抗を監視することも可能だったします。
結構、楽しいですね。

投稿: 壱源 | 2010年5月14日 (金) 13時23分

 詳しいことは解りませんが、新しい材料、同じ材質なのに変わった性質の部品等、作り出せそうでわくわくする話ですね。電気炉自体を無重力軌道上へ載せられれば、また変ったものが作れそうで、将来楽しみですね。
 材料を流れる電流の振る舞い、一定には行かない所が面白いですね。

投稿: クマ | 2010年5月14日 (金) 11時00分

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