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2010年6月17日 (木)

予想が当たると嬉しい

 海洋環境保護ネタというと、外洋を航行する船舶のバラスト水の処理システムの開発競争がホットである。

 現段階では11サプライヤーが認証を取って営業活動を行っているけど、その中で一歩リードしているのがオーシャンセーバー社の『Electro-Cleen System』って方法だ。

 大昔、この件で調査依頼を受けた時に自分が纏めた案が、海水に電位差を与えて、通電による直接滅菌と電極で生じる電気分解で作り出す次亜塩素酸での殺菌を核に据えるという案だった。しかし、当時は、この塩素酸というイメージから調査依頼元からは採用されなかったのを思い出しているところ。

 勿論、今、市場をリードしている方法論とは異なるけど、根本的なシステムの本質部分で共通の手法を選んだ企業が市場をリードしているという事実は、個人的には嬉しい事である。
 自分の方法では、電気分解のために電極を入れて与える電位差を直接的に利用する方法ではないけど、結果としては、理屈の上で生まれる電極間を通過する海水に作用する電位差と電極で発生する次亜塩素酸による滅菌を行わせる事に変わりないのだ。

 一般的に滅菌方法として、物理的な捕集としてフィルトレーション、凝集といった方法から、最もコンベンショナルな塩素殺菌、新しい滅菌システムとして、オゾン、紫外線といったモノ迄様々だけど、プラントシステムとして大掛かりでありながら、船舶という移動体に搭載されるという原則から、基本は、自己完結型のシステムがベストであり、そうでなければ、調達性の優れた薬剤等で行うというのが基本なのだが、この分野で最もベーシックなのが塩素という元素を基点としたシステムの構築というのが自分の持論であった。

 まぁ、紫外線、オゾンといった目新しいシステムに対して知識を持ち合わせていないのと、他業種等を含めて世間的に普及前段階の技術を適用するのは尚早という判断もある。

 細かい事は割愛するけど、海水の電気分解では通電による感電滅菌、次亜塩素酸殺菌による効果が期待できる。そして、利用する活性物質自体もポピュラー故に、必要な後処理があったとしても対応できるというのが優れている。特に、塩素系薬剤自体を積載して利用するのでなく、システムとして生み出すというのは、自己完結型のシステムとして非常に信頼性が高いと言える。

 手法として、こういう方法が市場をリードしているというのは、実に頼もしいものだ。

 この方法、この世界ではリードしているようだけど、実は他の業界では超一般的なモノ。漁船等の多くに搭載されているシステムを大型化したもの。中小規模で実績があるから、スケールアップもゼロから開発するよりは容易だし安価。こういうのが良い。

 しかし、この方法論的に目新しいモノは無いので、これだけでは、この市場を安定的に抑えるには役不足だろう。同じ方法を選ぶ事もあり得る話であり、方法論的に同じものを選択すれば、その保守サービス等で市場占有率を後発企業が逆転出来る可能性もあるだろう。

 此処で行うべきは、原理的に、この手法を採用するとしても、単純に電極を入れて電位差を与えるという方法を使わずに同じ効果を与える機器を利用する事等が理想的である。自身の試作したモノは、原理は同じだけど、既存機器を改造し、機器の付加価値として、この機能を持たせるという考え方。実際、市場を抑えるには、独自性と優位性が必要であり、それを担保するには特許等の権利主張が不可欠なのだ。それを無くして市場を抑えるなんて、実質不可能だ。

 取り敢えず、現時点においては、この原理が方法論の一つとして認知された状況。次は、その原理を具現化する手法に優位性を与えるモノを生み出せるか?これが勝負だろう。

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コメント

その話、実は最新の話でもあります。
国土交通省が日本の処理水を売って原油を買って帰るというのを検討中だったりします。
昨年末から研究会が官主導で立ち上がってます。

投稿: 壱源 | 2010年6月18日 (金) 23時42分

 このシステムなら、海洋生物ごと他の地域へ運ばなくて良いですね。
 古い話ですが、約30年前、日本の大型タンカーがバラストの真水を砂漠の国へ運んで売り、帰りに油を積んで戻ってきたという話でした。特に、東京湾へ注ぐ道志川水系の水が良くて、赤道を越えても傷まなかったという話でした。
 森を育て、良い水を得るのはこんな話からも、意義が有ると思って居ます。

投稿: クマ | 2010年6月18日 (金) 15時51分

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