特殊処理3を施したC/C材の摺動試験
引き続き、試験実施中である。基本は前回のコードLPCDL/LPCBLと同じだけど、摩擦係数を下げるべくフッ素系処理を施し、耐凝着性を高めたグレードでコードとしてはLPCFLとしている。硬度はLPCDLのHv=3000~5000、LPCBLのHv=7000より劣るHv=1500~2500だけどドライ摺動性の改善を目論んだ物だ。特に、無潤滑摺動性に力点を置いた開発品であるが、果たして試験結果はどうだろうか?
取り敢えず、速報値としては、
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1.供試材料
・滑り軸受:完全ドライ対応のカットレスジャケットベアリングのベース材
内径100mm、摺動長55mm
・スリーブ:C/Cコンポジットマトリックスの改質材料、開発コードは、LPCFL
2.摺動条件
・摺動環境:完全ドライ×2[hours]
・ラジアル負荷:0.20[MPa]×6[m/sec]
0.85kgのウエイトを偏芯半径130mmで1200rpm
3.結果
・摺動トルク:1.7[N・m]→1.4[N・m](2[hours])
・軸変位(隙間+振動):630[μm]→810[μm](2[hours])
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結果は、前回のLPCDL/LPCBLと較べると、僅かだけどトルクが高め。初動トルクは1.6[N・m]に対して1.7[N・m]、終了時が1.2[N・m]に対して1.4[N・m]となっているし、試験途中のトルク静定したと思われた後にトルク上昇して再静定という傾向を示している。これに合わせて、軸回転の歳差変位が段階的に増加傾向となっている。目的処理の物性を考えると、本来なら摩擦係数が低い筈だけど、逆に摩擦係数が高い。歳差変動(増分)の変化は駆動トルクの変動に連動している。回転挙動の変化から、接触面の崩壊が予測される。残念ながらLPCFL品は、前回のLPCBL品を上回るメリットは感じられない。摺動面を形成する繊維端の硬度が低く繊維の崩落的摩耗が進んでいるように感じる。試験後の装置系の温度自体は似たような数値だけど、軸歳差変位がLPCDL/LPCBLの倍近いのは、温度上昇による隙間増分以外に摩耗分が顕著と考えるべき。つまり、LPCDL/LPCBLより摩耗が進行している事が伺える。
低摩擦係数を狙った筈が摩擦係数が逆に大きくなり、摩耗量も大きくなっているのは予想外だが、摺動面に施したプライマー処理に利用した成分が悪影響を及ぼしているようだ。
因みに変位増分(温度変化分+摩耗分)を纏めると、
1.LPCDLが摺動端面硬度がHv=3000~5000で、+90[μm]
2.LPCBLが摺動端面硬度がHv=7000で、+70[μm]
3.LPCFLが摺動端面硬度がHv=1500~2500で、+180[μm]
となっている。前回までの1.と2.の結果の差は誤差?って思っていたけど、三つ並べると誤差でなく傾向として素直な数値と考えるべき。摺動端面硬度の違いは、処理による違いのパラメータの一つだけど、それと連動しているように感じる。
明日、解放検査を行うが、取り敢えずカットレスジャケットベアリングの市販プロトとの摺動試験からは外す可能性が高い。明日、解放後は、次のLPCSPスリーブを組み付ける。
これまで4パターンの試験を行っているが、それでも微妙に違いが現れて数が絞られる。この絞る作業は現物確認が大事。この段階が一番楽しい。
さて、本日は、カットレスジャケットベアリングの代理店として指定した業者さん(O社)がお見えになる。工業用軸受の販売代理店のM社とは異なるモノ。M社は新しい軸受を含め色んなバリエーションの軸受をポンプメーカーに販売するのが役割。だけど、代理店指定のO社は、私の指定した処理業者に様々な処理を指示統括して製品として纏める事をお願いするもの。O社で素材に施す処理を取り纏めさせて、仕上がった製品をM社に卸し、そこから拡げるパターンであり、私にとっても重要な役割を持つ取引先となる。
本来は、その任を私の同族会社が行っても構わないけど、製品として量が流れるようになると、扱える量的キャパシティーや、企業間の信用ベースとなる事業実績も必要であり、その辺りを考慮して選定したもの。まぁ、言ってみれば、総販売代理店となるのだ。M社さんは、陸上ポンプメーカー、特に、公的な先行待機ポンプメーカーさんへの販売代理店であり、O社さんは新しい技術を成立させる上で必要な技術を持つ協力企業の窓口としての役割を担っている。
まぁ、懸案であった流通体制、製造体制も一応は完成である。後はユーザーである各ポンプメーカーさんが評価してくれるのを待つばかり。性能的には従来システムを遙かに上回るから、評価結果が出るのも、そんなに先では無いだろう。
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