出発材料はC/Cコンポジットである。
これをベースに数種のグレードをラインナップしてある。商品名は伏せるとして、処理パターンとして紹介すると、
1.BC処理
マトリックスに合金含浸処理を行ったモノ。耐摩耗性よりも無潤滑摺動性を特に重視したグレード。形状安定性は母材と同等。0.2[MPa]×6[m/sec]で5時間以上の無潤滑摺動を許容。9時間迄確認済み。
2.TC処理
マトリックスの表面改質を行い耐摩耗性を向上させたモノ。マトリックスを化学反応によって改質している。マトリックス自体が完全緻密体で無いので、バルク材の表面改質のように摩耗の進行で表面改質皮膜の喪失は無い。摩耗が進行しても表面物性は改質状態が保たれるのがメリット。但し、事故潤滑機能は1.に較べると劣る。定格ドライでは最大1[hour]迄。耐摩耗性尺度として表面硬度は、Hv=3700。尚、形状安定性は1.と同様。
3.SC処理
マトリックスを緻密セラミックス化させるための処理を加えたモノ。マトリックスは内部迄セラミックス化する。耐摩耗性は圧倒的に優れるが、無潤滑摺動耐性は通常超硬合金と変わらない。コストが高いのでお奨め出来ない。形状安定性は1.2.に較べると劣る。
4.DL処理
2.のTC処理の上位グレード品。耐摩耗性を維持したまま表面硬度をHv=3000~5000迄高めた材料。後のL系処理を含めてマトリックス被膜の膜厚は薄いので10ミクロン以上の粒子摩耗には万能ではない。
5.BL処理
4.の上位グレード品。耐摩耗性と摩擦係数低下を更に進めたもの。Hv=7000以上だが、摩擦係数低下を更に進めたもので1.のグレードアップ品でスペック上は最強のグレード
6.FL処理
凝着摩耗耐性を高めたグレード。有機溶剤(原油、アルコール)+異物の耐摩耗性とドライ摺動性を高めたグレード。Hv=1500~2500。他のグレードは潤滑媒として水を想定しているが、このグレードは油のような有機溶剤を想定している。
これから評価を行うものが次の二種類。
7.SP処理
8.GL処理
何れも商品ラインナップにしていない。これから生き残るモノが何か?は試験次第。
で、来週は定格評価試験を二日で1種類の順番に行う。それが終われば、サイクル試験を行う。それで生き残ったモノとジャケットベアリングの出発品とは異なる高機能品で性能認証を行う。
D社、H社の製品に盤石の性能を付与するのに最適なモノを選ぶのが今回のテーマ。そのための処理方法を考えて試作したのが前述の8種の処理である。
楽観している訳ではないが、恐らく、悪くないモノが数種類得られるだろう。現在、D社で採用頂いているシステムに較べると圧倒的に全ての面で優れている。前世代も独力で開発したけど、既に前世代には存在価値を認めないのが自分の本音である。社会で使われている前世代品を速やかに新世代製品に置換してもらうのが自分の使命というか、そういうものである。
自分で作ったモノは作った当時はOKと思っていても、その時点で違和感が無かったというと嘘になる。しかし、今回のシステムは実にスマートで完璧というか、仕上がりに対する自信の度合が全く違う。3年に及ぶ評価試験全ての面で劣っている点は無いのが自信の根拠だが、やはり、良いモノを残し、満足出来ないモノには消えて貰うしかない。たとえ、それが自分の作ったモノでも、それはそれだ。今一なモノは、何百年経っても今一なのだ。
これが出来れば、それに貪欲な全ての企業に技術は提供してもよいのである。
D社のエンジニアには自分の考え方に対して、机上の論理の段階から賛同頂き感謝している。思えば8年前の事だ。それに対して、D社を紹介してくれたM社にも感謝しているし、M社の努力でN社を始めとして多くの企業に情報が伝達している。更に、このようなブログで情報を得て直接のコンタクトを取ってこられたH社にも感謝している。
多くの企業が本気度は知らないけどアプローチしてくれているのは実に有り難い。初期の段階で技術をローカライズさせない事、特定の企業に留めない事、それをネタで私欲を肥やさない事を指針として掲げてきたが、それは今後も守って進めたいものである。
なお、本日以降、先行待機軸受に関する情報はブログで随時公開することにした。まぁ、協力企業、問い合わせ企業のローカルな秘密な部分は公開出来ないが、自分の持っている情報に関して守秘義務は存在しないので、情報発信の方法として、このブログを使う事にする。
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