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2011年1月25日 (火)

先行待機ポンプ用無注水軸受×LPCFL、気中摺動試験の最終結果

 LPCDL/LPCBLに引き続き、フッ素処理を追追加したグレードであるLPCFLの摺動試験を実施した。

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1.供試材料
・滑り軸受:完全ドライ対応のカットレスジャケットベアリングのベース材
      内径100mm、摺動長55mm
・スリーブ:C/Cコンポジットマトリックスの改質材料、開発コードは、LPCFL

2.摺動条件
・摺動環境:完全ドライ×2[hours]
・ラジアル負荷:0.20[MPa]×6[m/sec]
        0.85kgのウエイトを偏芯半径130mmで1200rpm

3.結果
・摺動トルク:1.7[N・m]→1.4[N・m](2[hours])→1.56[N・m](24[hours])
・軸変位(隙間+振動):630[μm]→810[μm](2[hours])→720[μm](24[hours])
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である。結果は前回LPCDL/LPCBLスリーブと殆ど同じ結果であるが、トルク数値、歳差変位の数値の安定度は、前回のLPCDL/LPCBLより若干劣るのは昨日の速報通り。
翌日、装置系が初期温度に復帰した状態でのトルク検出、軸歳差検出でも傾向は同じ。

ここまでの結果を比較再掲載すると、

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1.LPCDL(Hv=3000~5000、μ=0.1)
・摺動トルク:1.6[N・m]→1.2[N・m](2[hours])→1.55[N・m](24[hours])
・軸変位(隙間+振動):760[μm]→850[μm](2[hours])→790[μm](24[hours])
・温度復帰後歳差増分:790-760=30[μm]

2.LPCBL(Hv=7000、μ=0.1)
・摺動トルク:1.6[N・m]→1.2[N・m](2[hours])→1.48[N・m](24[hours])
・軸変位(隙間+振動):670[μm]→740[μm](2[hours])→720[μm](24[hours])
・温度復帰後歳差増分:720-670=50[μm]

3.LPCFL(Hv=1500~2500、μ=0.1、フッ素処理)
・摺動トルク:1.7[N・m]→1.4[N・m](2[hours])→1.56[N・m](24[hours])
・軸変位(隙間+振動):630[μm]→810[μm](2[hours])→720[μm](24[hours])
・温度復帰後歳差増分:720-630=90[μm]
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 と、こんな感じ。1.と2.の違いは誤差レベルだけど、3.はトルク値も軸変位増分値も少々劣っている。細かい考察は省略するとして、今の段階ではベストは2.のLPCBLスリーブだろう。要検討のグレードは残すところ2種類だが、引き続き、本日はLPCSPスリーブの試験を行う。

 さて、この記事を作成前にはM社さんから今週から来週の内にT社さんも来広してきて、最新のシステムの実機運転の確認に来られるそうだ。
 今回のシステムは特許検索やブログ検索等で一応はオープンな情報開示をしているが、今年になってM社経由だけで国内で三社のポンプメーカーさんとのコンタクトを得る事が出来た。それ以外にも問い合わせが何点かあるので、掛かり具合としては悪くない。

 一応は技術の提供方法、製品の供給体制も整っている。当面はメーカー各社さんが自社の評価システムで評価を行う。売れるかどうかは評価結果次第だけど、取り敢えず、技術の周知は進んでいる。これが重要だ。

 ところで、訪れる企業の役員、管理職の片の正直な疑問として尋ねられるのは、同じポンプメーカーの一介のサラリーマンが、こういうやり方を行って大丈夫?って話を受けたけど、本日は、勤務先の経営者に現状の方法を選択した理由を伝え、了解を得ているので大丈夫である。

 今回の技術は、正直に言えば、本来なら勤務先製品から展開するのが常識的なのだけど、古風で保守的な会社故に新しい技術を取り入れる事に対する企業体質とか風潮の面で、難しい面が少なくない。
 しかし、個人的には開発したシステムを完成させるのが希望であり、その為には実環境での検証、実環境投入に際しての評価等が必要であり、真剣に導入を検討してくれて、技術的に議論可能なレベルの人による検討が不可欠という認識を持っている。自分以外の意見収集は、その普及を前提とした組織の優れた人材の協力が不可欠であり、現状では、それは社外からしか求める事が出来ない。社内においては意欲と知識レベルの面で、新しいモノを完成させる環境が不足しているという現状の確認を経営者からとった上で、同族の会社を興し、その資金を運用して基礎研究と特許申請し、協力体制を外部に作り事業化の為の共同開発を行っている。

 ところで、新しい技術の製品には、前身となる技術の製品もあるが、その技術自体を勤務先企業は放棄している。しかし、放棄前には取引先に半ば強引に製品調達体制をつくらせた経緯があるのだが、その経緯を無視して、前身技術の製品流通を遮断するというのは、協力企業に対する忠義に反するというのは自分の考えであり、協力企業に対する責任という意味で、今回の技術による製品は、その協力企業を販売の核に据えて展開を図っている。
 知的所有権の担保は、社外企業が自由に商品展開として扱えるようにするために行った処置、言い換えれば普及の意思の無い企業(勤務先(笑))による障害を取り除くための処置であり、技術普及の意思が無い企業が知的所有権を持つと、その普及には様々な障害が生まれる事を見越した上でのやり方なのである。
 この説明等は、全て経営者に対して半ば強引に了解を取り付けている。

 まぁ、こういうやり方を試みても、モノが上手く出来上がるかどうか?というのは、これからの事。駄目かもしれない。駄目かもしれないというリスクの度合を如何に見積もるか?は、それを使えるか否か?を判断する人次第でもある。正直、上手く行くかどうか?それは判らない。しかし、調べた範囲では、誰も試みた事の無い方法であり、少なくとも、その方法によって既に日本社会の公共の設備の中で快調に稼働しているのも事実である。

 良い結果が出ようが出まいが、誰も思い付いた事のないモノで必要とされているニーズを満たす新しい技術を生み出すという行為、そのプロセスというのは、やはり退屈しないものである。実際は仕事という意味とは違うけど、こういう作業は実に愉快。これは摺動技術というフィールド故に仕事っぽくみえるけど、単車、パソコン、自転車等々のフィールドでも結局は同じ事なのである。フィールドは違っても疑問に対する物事の見方、進め方は全く同じ方法である。

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