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2011年1月21日 (金)

開発の推進力

 本日、遠路はるばる来広頂いた企業と打ち合わせを行い、技術を公開して利用を許諾した。
 その話の中で、新しい機構を考える。その原動力は何か?何が原動力の時に気合いが入るか?そういう部分の話を今日伝えきれなかったので記事にしてみる。

 対象は、今ブログで公開中の先行待機ポンプ用無注水軸受の話だ。

 そもそも、無注水軸受という名目で開発は行っていない。発端は、勤務先における官学との付き合いで始めた材料開発における共同プロジェクトへの参加が発端だ。今振り返れば、少なくとも最初の5年間くらいは、そのプロジェクトではサラリーマン的に作業していた。そんな生ぬるい気分で作ったのは、新開発した材料を用いたセラミックス軸受である。用途は、耐摩耗性重視の品だ。

 この耐摩耗性セラミックス軸受は開発後程なくして実機に搭載したのだが、一定数量出荷した後に相当数の破損事故を起こした。当時、破損の理由は全く判らなかった。破損の理由が判らないから対策も打てない。そういう状態で2年近く有効な対策を打つ事が出来なかった。その結果、この開発は打ち切りとなっている。

 此処までは勤務先の従業員としての話だし、所謂、耐摩耗性セラミックス軸受の話。

 その後は、開発は公には終了したのだけど、個人的には釈然としない状態が続いていた。このモヤモヤ感は放置出来ない。原点に帰ろうと決意したのが2003年頃の話だ。原点というのは、自分の作った耐摩耗性セラミックス軸受を再現性を持たせて破壊するには、どうすれば良いか?で既成概念を捨てて再調査することにした。

 その結果、壊そうとすれば無水潤滑しか有り得ないという結論に達したのが2004年の事。そこで生まれたのは、勤務先では予算は取れない状態で、勝手に無水潤滑対応の軸受を開発すると決めて、無水潤滑での破壊パターンの洗い出し、その抑止機構の発案、具体化を図り2005年に現在実用化されているC/Cコンポジットを用いた軸受システムを開発した。そして、このモデルを現在D社に採用頂いている。

 その後、2008年には、これを普及させようと、T社等にも出向いたのだが、試験室レベルでは従来システムでは発生しないような嫌らしい挙動、具体的にはスリップスティックによる摩擦振動が発生して試験が進まなくなってしまった。最後にT社にお邪魔したのが2009年だ。T社における問題解決は2010年になっても達成されず、今に至っている。因みに、この問題は、既に実用頂いているD社でも当初悩んだ問題である。この摩擦振動は複合的な要因によって生まれているが、少なくとも軸受システムの改良だけで逃げたいという自分の考えは、協議の他のメンバーの中では少数派だった。

 協議の後に、単独で解決するのを行動の指針として決めたのが2008年末の事だ。そこで、摩擦振動が発生するメカニズムと条件をモデル化して、その原因を無くすためには何が必要か?を再度考え直し、既成概念を捨てて生み出したのが最新のシステムだ。結果、最新のシステムでは、この分野の原点であるセラミックス軸受の性質を殆ど全ての要素で否定する事で成り立つという状態となっている。

 今回のシステムには大きな自信があるが、それが出来たのは、D社での試験時に挙動を始めて目撃し、前世代システムの利用を真剣に検討してくれたT社においても同じ挙動が発生したこと。つまり、別個の試験機で挙動が再現性を以て現れてきて、更には、T社の事業進捗に当たって、担当エンジニアが摩擦振動によって試験を中断させられた事である。それで悩んでいる原因を取り除くという気持ちが開発を進める原点になったのだ。
 最新のシステムでも、予想出来ない欠点が出てくるかも知れないが、その欠点こそ、次の一手を生み出す原動力になるだろうと思っている。

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