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2011年1月21日 (金)

既存の先行待機ポンプ用無水軸受評

 『先行待機、無注水軸受』の検索ワードが多い。まぁ、隠すつもりも無いから、既存の軸受についての勝手な論評を並べてみる。

1.一体型セラミック軸受+超硬合金スリーブ
 軸受に円筒一体型のセラミックスを使うのはアリだけど、軸受内の摺動面に溝があるのはセラミックスの強度的に心配。強度を心配してバックメタルとして金属円筒を焼きバメして使うのも現実的にはセラミックスに大きな残留応力を掛けているのが心配。理論的には圧縮応力だから強化されている筈だけど、金属内面とセラミック外面を面で合わせた時、焼きバメによる密着状態は均一で無い事の方が多い。結果、残留応力自体が偏在というか均一で無い。これは自分でも確認済み。高荷重摺動試験を行った時に単品のセラミックス円筒よりも早く凝着による破壊が現れたりする。理由は、応力分布の不均一(経時によって寸法精度が失われやすく、そこに局在応力が付加されると壊れる)によるもの。
 後述のシステムにも言える事だけど、スリーブに超硬合金を用いるのは、内部回転軸に膨張係数が大きい金属があるのに、、、、、自分的には解せない。摺動による発熱によって超硬合金円筒には引っ張り応力が掛かる。これを防ぐには超硬合金円筒肉厚をアホみたいに増やす必要がある、、、、しかし、、、、外径100mmで厚み15mm迄増やしても過酷な条件では引張破断する。これも確認ずみ。
 因みに、自分の0.2MPa×6m/secのドライ試験で耐えた時間、、、、僅か6分。6分後の再使用は不可。回転軸の歳差変位がゼロになる直前に、駆動トルクは急激に増大し、温度も最後に急激に上昇する。その変化は凄まじい。試験装置上、駆動トルクのリミットを4[N・m]としているから壊れるだけだけど、ポンプ内で強力な駆動機を使っていると、、、、ンメチャクチャに壊れるだろう。

2.PEEK軸受+超硬合金スリーブ
 PEEKっていうのはポリエチルエーテルケトンという樹脂。これをフィラメントワインディングのカーボンで複合化した軸受。大手の企業が無水軸受として採用しているモノと似たようなモノだろう。
 これも評価してみた。ドライ摺動性、、、、、たしかに1.の軸受を遙かに上回る優れもの。ドライ試験では最長1時間53分迄使用可能であった。
 しかし、軸受内の軸の回転歳差における歳差変位を測定すると1時間53分時点で歳差量ゼロとなり抱き付いた。抱き付いた結果、急激な発熱で軸温度は250[℃]以上に到達して、厚さ15mmもある超硬合金円筒製のスリーブは見事に真っ二つに割れた。その時の軸受側は樹脂が溶融してカーボン糸が危険な状態(手に刺さるような状態)で剥離していた。
 なお、如何に炭素繊維で強化していても、軸受は樹脂軸受である。何らかの対策無しでは耐摩耗性を確保するのは難しい。
 しかし、既存システムで私のシステムを除外すれば、唯一の選択肢となっているのも事実。これが競争相手だろう。

3.分割型セラミックス軸受+超硬合金スリーブ
 摺動材を分割構造としているために緩衝材ゴム上に配置された構造。見た目的には、軸受溝が多数配置されているような構造。一見、摺動面の追随性が優れ面圧分散化に効果的に見えるが、荷重を受けた時に形状安定力が無いので軸回転が収束し辛い欠点を持つ。問題は、摺動による発熱が軸受内径を減少させる方向に変化する点。このドライ試験では、許容時間は3分程度。抱き付きによる破壊では、超硬合金スリーブの破断、分割セラミックスの破断、緩衝材からの剥離、緩衝剤の溶融や炭化が生じる。
 一般にセラミックスは大型化が難しい。大きな軸受システムには摺動面の分割構造が不可欠だけど、それによる問題点はかなり大きな問題。実際、ゲリラ豪雨対策の先行待機ポンプクラスだと、一体成型軸受けは厳しいはずだ。

4.分割型セラミックス軸受+C/Cコンポジットスリーブ
 自分が当初製作したのは3.のシステム。しかし、これでは無水環境では使う事が出来ないと判断して、軸スリーブの超硬合金の使用を止めてC/Cコンポジットを出発材料とした複合材料を開発した。
 これによって、非常に優れた耐摩耗性、無潤滑性能を得た。現実に現在大手企業が採用している2.のPEEK軸受システムの時間を上回る2時間35分という記録を得た。
 しかし、客先要件を満たすような仕様に見合った数値設計を行うと摩擦振動が発生し、振動が収束しないという問題が明らかになった。
 通常使用や自分の作った試験機では問題は出ないが、利用を希望する企業の試験装置では問題が露呈する。その問題を装置や機械の責任と思うと楽なんだろうけど、そういうのは嫌いであり、色々と調べてみた。
 すると、分割型セラミックス故の構造や形状安定性の不足が問題と明らかになった。その実証試験も行った。現状、これでも問題は起きないが、構造上の複雑故の高コストも欠点の一つ。この運転条件によって露呈する欠点を潰したのが最新のシステムに繋がる。それ故に、このモデルは自分的には過去のモデル。一言で行って、、、ゴミだ。

 こんな感じ。どれも今一。持論では、このような手法では問題は本質的な意味で解決出来ない。

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