最終無潤滑摺動試験結果:LPCSP×製品プロト無注水軸受
昨日、T社さんの目の前でデモンストレーションに使用したLPCSPスリーブと製品スペックの無注水軸受の無潤滑摺動試験が終わった。
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1.供試材料
・滑り軸受:完全ドライ対応のカットレスジャケットベアリングの製品プロト
内径100mm、摺動長55mm
・スリーブ:C/Cコンポジットマトリックスの改質材料、開発コードは、LPCSP
2.摺動条件
・摺動環境:完全ドライ×2[hours]
・ラジアル負荷:0.20[MPa]×6[m/sec]
0.85kgのウエイトを偏芯半径130mmで1200rpm
3.結果
・摺動トルク:1.39[N・m]→1.22[N・m](2[hours])→1.38[N・m](24[hours])
・軸変位(隙間+振動):540[μm]→630[μm](2[hours])→540[μm](24[hours])
・温度復帰後歳差増分:540-540=0[μm]
である。同じLPCSPスリーブで軸受の違いのみで比較すると、
★カットレスジャケットベアリング構造検討軸受×LPCSP(Hv=3000~、μ=0.1)
・摺動トルク:1.7[N・m]→1.3[N・m](2[hours])→1.59[N・m](24[hours])
・軸変位(隙間+振動):720[μm]→820[μm](2[hours])→720[μm](24[hours])
・温度復帰後歳差増分:720-720=0[μm]
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である。
今回のLPCSPは、基本はLPCDL、LPCBLと同等だが、やはり温度復帰後の軸歳差変位の増分値は基本的にゼロであり、2時間のドライ摺動でも摩耗は皆無といっても差し支えない事を確認した。
摺動においては、接する二面が共に平滑であるというのが流体潤滑における必須条件だが、ドライ摺動においては、必ずしもそうではない。一方の摺動面が高硬度で平滑であれば、実は摩擦係数は低く保たれるのである。勿論、双方の二面の面粗度が荒れた状態では全く使い物にならないのは言うまでもないが、、、、
これは、従来からの比較データ収集のために行った様々なジャーナル軸受の摺動トルク、軸受隙間消失速度の測定試験で得た結果に基づく判断である。
余談だけど、0.2[MPa]×6[m/sec]、初期隙間0.55mmで軸受隙間(軸歳差変位量)がゼロとなる迄の時間を計測したデータがある。
①凝着リスクが存在する平滑な摺動面同士
例:炭化珪素/超硬合金、窒化珪素/超硬合金
無注水摺動時間(計測結果):6分35秒
②ワインディング繊維集合摺動面と平滑摺動面
例:PEEK軸受/超硬合金
無注水摺動時間(計測結果):1時間53分
③凝着リスクの無い平滑摺動面と繊維端面集合による摺動面
例:私の開発した特殊セラミックス軸受/C-Cコンポジット系特殊スリーブ
無注水摺動時間(計測結果):2時間35分
④ワインディング繊維集合摺動面と繊維端面集合による摺動面
例:PEEK軸受/C-Cコンポジット系特殊スリーブ
無注水摺動時間(計測結果):1分50秒(笑)
このように、①の平滑面同士もダメ、④の粗面同士もダメ、②とか③なら結構大丈夫なのだ。
こうして考えると、今回の一連の試験では、軸受側に形状を工夫した機械構造によって軸受性能を担わせているモノの、ドライ摺動では面同士の平滑さの違いによる影響が顕著に表れており、形状効果確認用軸受とは異なり、機械構造的な工夫に加え、耐凝着リスクを解消した改質処理であるとか、局部的なスリーブ摺動に対して摩耗の影響を受けない高硬度の実現が、無注水摺動試験による運転後、温度復帰すれば摩耗量がゼロという結果をもたらしている事が判る。
無注水軸受の性能を、機械構造、材料物性等の様々な要素を用いて確保することで、従来にない優れた耐性を持っていると言う事が判る。
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