軸受隙間の決め方
軸受隙間っていうのは、案外だれも関心の低い項目。実際、隙間の計算っていうのは、超大雑把で、その隙間の定義の仕方をしっているような設計者は殆ど皆無。ハンドブックとか便覧に載っているような、実径×1/500、1/1000とかゴム軸受なら1/300なんて数値算出は知っていても、その算出根拠を判りやすく解説出来る人は、少なくとも、同僚、知り合いを含めて出会った事が無い。
まぁ、機械設計においては、そういう部分の関心は高くないというのが実情だろう。それ故に、隙間の使用限界なんかの決め方も結構大雑把だったりする。
しかし、回転機械においては、この部分の数値が紹介されている算出根拠を知る事は極めて重要であり、その根拠知らずして、実環境における設計条件から乖離した状態で発生する様々な現象に対する対策は打てないもの。この根拠は、突き詰めていくと案外シンプルなんだけど、シンプルにするために用いる手法を駆使して原理が理解出来たとしても、その理解を実設計において具体的数値として与えるようなアルゴリズムを組むのは、実は結構大変なんである。幾何学的な量関係、力学的関係等を数式化し、無次元パラメータを媒介することで高次の方程式を作って解く場合が多いが、それを手計算で行うのは無理。そうなると、パソコン等電子計算機を駆使して回して解を求めるのである。これを連続的に行う事で、隙間の解が何と相関するか?別の因子と組み合わせると、どんなリスクファクターと、どんなチャートが作れるか?が見えてくる。
正直、ここまで考えても完璧とは思わないが、少なくとも、こういうモデルの構築と試験検証によって仮説の正当性が実証出来て、ある程度の事が言えると思っている。
本来、流体軸受と無注水軸受というのは、摺動を維持し続けるために満たす要素的な適正値というのは異なっている。この異なった数値を同時に満たさなければ機械に適応させる事は出来ないものである。勿論、流体潤滑域、無注水摺動状態の何れの状態でも、その状態における条件の違いで適正な数値解は異なるもので、数値解に連動して機械寸法を変化させるのは実質困難である。しかし、摺動における現象から生まれる状態を摂理のまま利用して、隙間数値を変化させることで、使用環境における適正範囲に留めようとするような材料設計や構造設計は可能である。
こういう考え方というのは、機構的な設計とは異なるモノで、もっと現象的な変化を組んだ設計法であるが、こういう現象論的な設計というのは通常の工学系ハンドブック、便覧には記載されていない。
今回、行う次の実験では、手持ちの機材を見ると、思い浮かべた仮定を実証出来るバリエーションが作れそうなので、早速、それで試験を行うのだが、そういう機材を何故持っているか?というと、大昔に行った緩衝材ゴム上に特殊セラミックスを分割配置して製作したジャーナルベアリングの致命的欠陥による不可避挙動の影響を最小限に留めるように準備した物である。っていうか、現行試験においては、その段階で開発した機材を用いているが、次は、それを初期に製作したものに戻して再試験を行い、構造設計の素案を作ろうとするものである。
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