年間の放射線被曝限度量が1mSvから20mSvになった。それで、安心しろとか避難しろとか、いろんな情報や指示が飛び交っている。
しかし、、、、そもそも1mSv/yearとか20mSv/yearとか、何処から来たの?数値の根拠は?っていうと、納得する説明に辿り着くのは難しい。一番判りやすいのは、ICRPの説明である。
線量限度というのは、被ばく源からの線量合計値の上限であり、数値としては放射線の影響による兆候、症状が絶対的に現れるか否かの『しきい値』、境界条件値で与えられている。
放射線の場合のしきい値とは、放射線影響の分野では、皮ふの紅斑、脱毛、不妊など、放射線の確定的影響には、それらの症状を呈する最小の線量値を基準にしている。
細かい数値は、ここを参照するとして、そこで定義された確定的影響を受ける最小数値は精巣関連で0.15Sv/一回、卵巣では2.5Sv/一回、年間でいうと0.2Sv/year、骨髄関連だと0.5Sv/一回という数値。
枝野流『直ちに』は、0.15Sv、つまり150mSvは受けてないなら直ぐに何かが起こる事は無いよ!って事。枝野さんの弁護士流なら確定的影響は無いと連呼しているだけだろう。
では、枝野さんお得意の『直ちに』に含まれない部分、それは放射線を浴びる事よって確率的に高まる影響も、被ばくを継続して受ける期間によるリスクの蓄積を考慮している。被ばくの継続とは、放射性物質が散乱した地域で生活する事による外部被ばく、放射性物質を体内に取り込んで、取り込んだ放射性物質が発する放射線による内部被ばくを受ける状態の継続を表す。極論すれば、放射性物質を含んだ食材を食したら、それが体外に出るまで内部被ばくを受けるという事を示している。
これらの定義によって、過去の疫学調査、統計によって放射線の影響が表れない上限値が生涯線量で1Sv、単年で言うと公衆の場合の1mSv/year、作業者での20mSv/yearという事のようだ。
この年あたりの定義も細かく説明されていて、永遠に続く/yearではない。5年間の平均としての公衆で1mSv/year、作業者の20mSv/yearであり、弾力的な運用としては公衆の場合は5mSv/5years、つまり、単年でオーバーしても5年平均で治まればOKということ。作業者の場合は、100mSv/5years且つ単年限度値が50mSv/yearということ。
ここで、確定的影響というのは放射線を浴びると絶対的に発する症状のことで、皮ふの紅斑、脱毛、不妊などが該当するが、しきい値以下であれば生物としての修復機能によって修復されて機能障害が残らない絶対安全に該当する数値ということ。
次に、確率的影響というのは放射線を浴びる事によって高まる発生率を持つ障害、ぐまりガン、白血病、遺伝的障害のこと。ガンの発生とは、僅かな細胞レベルの損傷であっても細胞が修復される際の不完全性が原因とされており、どんなに僅かの線量であっても確率論故にゼロとはならない。ゼロのしきい値というと放射線を全く浴びないと言う事になる。確率的影響をゼロに出来ない状態で制限値を与えるには、発生確率が容認出来るレベルとされている。
このような影響を受けない限度が実効線量限度ということになり、特に発生確率がしきい値でゼロにならない確率的影響が線量限度決定に大きく影響する。
確率的影響というからには、統計、実験、調査から決められているが、広島や長崎の原爆被曝者調査や実験的線量評価(T65D)からコンピュータによる線量評価計算(DS86)への切り替えによる広島・長崎原爆被ばく者の被ばく線量再評価等によって求められている。
調査によって、被曝の有無、程度によって年齢別の死亡率が如何に影響を受けているか?を算定している。死亡率の影響が容認出来るレベルか否か?というのは、10-3という数値。この数値に該当するのが生涯線量1Sv、年間線量で1mSv/yearということ。1mSv/yearという年間線量は時間あたりでいうと0.114μSv/hourということ。
作業者の場合(就業期間中18歳から65歳まで)、一様に連続して被ばくするとすると、年実効線量が20mSv(生涯線量は1.0Sv)のとき、年齢別死亡率は65歳まで10-3以下(890人/100万人)となる。
こういう数値が根拠のようだ。日本政府から発表された20mSv/yearという数値の根拠は、探し出す事が難しいようだけど、屋外なら屋内の何分の一、この状態が続く期間、そういう観測的な計算で取り敢えず20mSv/yearとしたんだろうか?
枝野流の安全論では確率的影響については言っていないという逃げ道があるのだ。
一般に放射線の確率的影響が多く表れるのは細胞の新生再生が活発な児童期の筈。そこに作業者と同じ基準を適用するというのが狂っているというのが素直な感想。
風評に惑わされるなとか、ヒステリックに振る舞うなとか、確かにそうだけど、政府、省庁の発表する数値等が微妙に納得出来ないと、皆は安全サイドに意識が働く。或る意味、仕方ないとも言える。
個人的には、確率的影響を大きく受ける成長期の世代は、基準値を小さくしても大きくすることは有り得ない。ICRPで1mSv/yearというのなら、それを厳格に適用すべきだろう。毎時で言えば、0.114μSv/hourを越える所から待避、、、それは避難区域外でも同じく対処するのが人の心、親の心を持った施策だろう。正直、子どもが居るなら半径50km待避っていうのも理解出来無くないのだが、、、、。
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