ありがたや、ありがたや、、、
さて、話は健康とも自転車とも単車とも関係無い話。
本来は別のブログに掲載するネタだけど、、、
最近話題のゲリラ豪雨等の大雨による都市洪水対策に使われる先行待機ポンプ。
この先行待機ポンプは、雨が降って地下貯水槽に水が入る前に、大雨が降り始めた段階で全力運転して、水が流れ込んできたはしから排水するポンプだけど、大雨が降っても貯水槽に水が無い状態から運転する事が求められている。
つまり、、、、水の無い状態で全力運転するのである。
水の無い状態で全力運転をすると、羽根車を駆動する回転軸を支える軸受は水の無い状態で運転されるのだが、そうすると、ドライ運転、無潤滑運転で本来なら壊れるのだ。
そこで、このポンプを現実のモノとするためには、ドライ運転で高温になっても耐えて、突然水が流入して急激に冷やされても壊れることなく、更に、雨水という砂混じりの泥にも摩耗しない事が求められている。
それを実現するために、独自の技術で開発に着手したのが2001年、プロトタイプ作成が2003年、その後、あるポンプメーカーが採用して東京都のポンプ基地に何台か採用されて現在に至るのだが、この軸受の最新モデルが2010年に完成し、これを別のポンプメーカーで評価試験を行って頂いている。
評価試験の結果は、相当に良好な模様。現在、実際の現物ポンプで試験して頂いているが、性能的には、かなり満足して頂いている様子。採用されなければ意味ないかもしれないが、取り敢えず、第一段階としては満足だ。
因みに、最新のモデルを開発するに到った経緯は、今評価頂いているメーカーに他メーカーで実績のある軸受の最初のモデルを提案した際に、スリップスティック振動が発生して苦労を掛けたから。
その苦労を考えて、スリップスティック振動の発生要因を構造変更によって解消して作り上げたのが現行モデル。
この最新の軸受システム、このメーカーさんのエンジニアに対する自分の解答。ただ、構成材料が先端材料であり高騰しているので、これが問題。
これに変わりうる材料を何通りか選んでいる最中だけど、更に次なるステップに踏み出す必要がありそうだ。
やはり、性能的にOKでも、世の中に普及させてこそ価値がある。既に都内等で普及しているとは言え、台数的には僅か、、、、台数を増やすには、高騰する材料を使わずとも同等の機能を得られる材料を生み出すか、見つけ出すか、、、それが必要。
しかし、自分で言うのもなんだけど、この新しいシステム、考え方が素晴らしい。従来システムの致命的な破壊挙動が本質的に生まれ得ない構造であり、更に、固くない材料でありながら、耐摩耗性を確保しているというのが完璧。耐摩耗=高硬度化という既成概念を別の方法で解決出来ているのは、我ながら完璧だと思う。
因みに、伝統的な機械であるポンプのパーツながら、この新しいシステムの発想の大元は、スペースシャトルのブレーキ部品、ロータリーエンジンのアペックスシール、ロータリーエンジンのハウジング、エンジンのシリンダー、新幹線500系のパンタグラフといった部分。そこに含まれているパーツの機能根拠を利用して作り上げている。既存の技術の集大成によって新しい価値を作り出しているのだが、、、、
勿論、発想を具現化する上で数値化のプロセスでは、基本的な概念を理解して数値を気目打ちするための論理的な根拠も必要だし、その論理に用いる理論の理解も必要。大雑把とか、誰かに聞いたとか、何となくとか、、、そういう曖昧さは当然排除している。数値には根拠があるのは当然だ。敢えて言うのは、勤務先の根拠の乏しい数値を適当に生み出すような設計手法は用いていないという主張があるからだ。
この新しいシステムが、複数の企業で性能的に満足できる結果を与えているというのは、エンジニア冥利に尽きる。
正直、人間っていうのは、先人の知識と知見をベースに新しい創造、知見を生むのが使命だろう。そうやって得た新しい知見が、後に続く人の知見になるというのが最大の喜びである。
猿まね、模倣、偽造で金を儲ける活動は、人間として最も卑しい行為である。
知識を成熟して続けるという行為が人間の特徴だと考えているから、自分で新しい知見を編み出して、これが他の人を納得させるというのは、、、、実に嬉しい事だ。
死ぬまでに、エンジニアとして何か一つ新しいモノを作る、、、、それだけで満足である。新しいモノを生み出す苦労は良く知っているつもりだが、これで自分の創造者としての役割は終わったと考えて良い。
残りの人生は、、、、自分の趣味と健康のためだけに生きるので良いような気がする。
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