確定拠出年金、利用する?
確定拠出とは上手い事言ったモノである。拠出額が決まっているという事。まぁ、確定給付年金の対語みたいなモノだから、本来は給付未確定年金というべきものかもしれない。
年金というより、一種の長期型の金融商品。そして、メリットを有無には投資信託前提の商品だろう。
これ、個人型、企業型と二種類あるようだけど、少なくとも個人型に入るのは手数料等を考えると有り得ない。
この制度、始めたら60歳迄基本的には止められないのが大きな特徴である一方で、掛け金が非課税となり節税メリットが美味しいと言われている
でも、ここで大きな落とし穴。それは、資産形成に大成功して受け取る金額が大きくなると、その大きな金額に対して、しっかり所得税が掛かる訳で、結局は御上が損しない仕組みになっている訳だ。つまり、60歳以降で一時金等で受け取る段階では、課税され得るということを覚えておくべき。資産形成前には好条件で吊って、形成後にガッツリ、形成失敗では知らんぷり。これがホントの姿だろう。
節税メリットが大きい理由は、政策的に、こっちに誘導したい意志があるから。従来型の国民年金、厚生年金では制度が支えられないからであり、もしかしたら、十数年後は、こちらが主流で従来型の国民年金制度は無くなっているかも知れない。全て個人責任で老後も賄えというのが大きな意志だろう。
さて、この確定拠出年金を運用して資産形成するには?やはり資産が大きく育つというのが必要。それで、掛け金、利回り、期間で計算してみた。掛け金は常識的な月1万円~最大値の25,500円だ。
年数別で利回り別、掛け金10,000円~max25,500円で計算してみた。
1-1).22歳で年数を38年(元本:456万円~1162万円)
・利回り0.7%の場合が、523万円(+67万円)~1336万円(+173万円)
・利回り2.0%の場合が、683万円(+227万円)~1751万円(+588万円)
・利回り5.5%の場合が、1433万円(+977万円)~3902万円(+2739万円)
1-2).30歳で年数を30年(元本:360万円~918万円)
・利回り0.7%の場合が、401万円(+41万円)~1024万円(+106万円)
・利回り2.0%の場合が、496万円(+136万円)~1266万円(+348万円)
・利回り5.5%の場合が、917万円(+557万円)~2388万円(+1420万円)
1-3).40歳で年数を20年(元本:240万円~612万円)
・利回り0.7%の場合が、258万円(+18万円)~659万円(+47万円)
・利回り2.0%の場合が、297万円(+57万円)~758万円(+146万円)
・利回り5.5%の場合が、441万円(+201万円)~1125万円(+513万円)
1-4).45歳で年数を15年(元本:180万円~459万円)
・利回り0.7%の場合が、190万円(+10万円)~485万円(+26万円)
・利回り2.0%の場合が、211万円(+31万円)~539万円(+80万円)
・利回り5.5%の場合が、283万円(+103万円)~723万円(+264万円)
1-5).50歳で年数を10年(元本:120万円~306万円)
・利回り0.7%の場合が、124万円(+4万円)~318万円(+12万円)
・利回り2.0%の場合が、134万円(+14万円)~341万円(+35万円)
・利回り5.5%の場合が、163万円(+43万円)~415万円(+109万円)
ということ。
これを見ると実に魅力的な金融商品である。但し、この金融商品が魅力的なのは、利回り2%ではパワー不足。5.5%の利回りとなると相当に美味しい。
しかし、この制度が始まって、これまでの加入者実績では0~1%に集中しており、利回りが0.7%だと旨味は有り得ない。企業型ならいざ知らず、転職等によって個人型に移行したりすると、手数料(金融機関によって異なるが)が年額6000円程度は掛かる。10年で6万円以上の手数料がかかるので、利回りは最低で1%以上でなければ元本割れに陥る。
で、実績を調査してみると、この十年程度の実績だけど、加入者の多くが0~1%の安全な商品を選んでいるという実態。実態以上の数字を出す業界の「想定利回り」の平均も右肩下がり。2001年には2.39%だったが、2010年には1.86%まで落ち込んだ(企業年金連合会)でおり、現実には相当に低い利回りしか期待出来ないのが現実であり、紹介資料である5.5%なんて数字は相当なリスクを抱えないと得られない数字でもある。
確定拠出年金で5.5%程度の利回りを得るには、安全を重視した預金や保険では力不足であり、株式に投資する投資信託を組み入れる必要が高い。そのためのスキルが必須ということでもある。
さらに、最近の数字では、回復したとはいえ、確定拠出年金で元本割れは半数近くだという。2011年時点では加入者の60%以上が元本割れしていたようだ。確定給付年金ならば、予定利回りと乖離したぶんは会社が補填してくれるが、確定拠出年金はすべて自己責任。
この制度を客観的にみて利用する価値が在る世代というのは、掛け金を抑えても元本がある程度見込まれ、利回りで3%以上を狙う資金運用力を身に付ける事が出来る程度の地力が必要ということ。
企業年金連合会の発表する想定利回り+αで元本を倍増出来る条件に該当する人だろう。当然、想定利回り+αで資金運用できるだけの投資力を身に付けるには、市場での取引を実践することでスキルを身に付ける必要があるだろうから、個人的には、この制度で老後に+αの安心を得られる人というのは、条件的には30歳未満で毎月1~2万円を負担なく拠出出来る人と言う事と思う。
選ぶ商品を全て定期型にしてローリスクで運用し、節税メリットがどうか?だけど、取得、家族構成にもよるけど、最大で3~5万円程度の税金が安くなる計算。これにメリットを見出すなら利用するのもアリ。掛け金を抑えて長期運用を前提に考えると、悪くない選択だろうが、その軽減される所得税効果と、60歳迄解約できないという制約を天秤掛けて判断する必要がある。車の購入、リフォーム、学費等でまとまったお金が必要な時に、どうか?が問題だろう。
総合的に、資産形成性のメリットを考えると、最低でも30年以上の運用可能なら利用しない手はないように思う。20年~30年だと運用に見合うスキルの有無、そして投資出来る金額次第。そして20年未満だと敢えて、、、というのが正直な感想だ。
| 固定リンク
コメント