ステンレスメッシュホース
二輪車のブレーキタッチの改善に絶大な効果があるのが、ブレーキラインのステンレスメッシュホース化だ。タッチというと、強く握り込んだ時のスポンジーな感覚だ。これは、一定以上の圧力を受けた時のブレーキホースの膨張による影響であり、これを改善するのに有効なのが、ホースの耐圧変化を抑えるメッシュホースへの交換である。
ノーマル車両は基本的にゴムホースを使っているが、これは柔軟性に富んでおり、フィッティング部の破損リスクも少なく、変形疲労によるホース破断のリスクも少ないためだ。更に、新しい内はホースの強度も十分でブレーキタッチ自体も、割と良好だったりするのだが、経時変化によるゴム劣化に伴うブレーキタッチの悪化は避けられない。
そんなブレーキタッチの改善に有効なステンレスメッシュホース化だけど、留意すべき点が何点かある。それは、ステンレスメッシュホース化に伴うリスク軽減への配慮である。
一般に純正ブレーキラインは、マスターシリンダーから三つ又下の分岐ジョイント迄は一本のラインで接続され、分岐ジョイントから左右キャリパー迄が各々接続されている。
マスターシリンダーから三つ又下迄はサスペンションストロークは影響しないので最短接続されており、三つ又下からキャリパー迄がサスペンションストロークとゴムホースの柔軟性を考慮した上での長さが与えられている。
これを、ステンレスメッシュホースに置き換える場合、ステンレスメッシュホースは本質的にゴムホース程の柔軟性は有していないので、サスペンションストロークに伴うホースの曲がり量は少なくするように配慮すべきである。つまり、サスペンションストロークに伴う長さの変化率が小さくなるように、ホースの固定距離を長くするのが常道であり、マスターシリンダーからキャリパー迄ダイレクトに接続するのが望ましい。長い距離でストローク変化量を緩やかに吸収させるために、ラインの取り回しの純正の固定部と同じラインは通らないのが理想である。緩やかに大きな弧を描き、ホースの局部に曲がりが生じないような配慮が必要である。
この配慮を怠ると、フィッティングの付け根に疲労が集中する等して、メッシュステンレスワイヤーの破断、ホースの破断を招きかねないのである。実際、ステンレスメッシュホース化した車両でホース破断の事故を呈する事も少なく無いのである。制動時に急に圧が抜けて制動を失うと非常に恐ろしい事になる。
この度、ステンレスメッシュホース化したCXでは、純正ラインでのホース長80cmに対して、ステンレスメッシュホースの長さは、右キャリパーが100cm、左キャリパーが105cmとかなり長めにしているが、ホースの取り回しをマスターシリンダーからメーター前方、ヘッドライトケース裏を経由して極力大きな曲がりでキャリパーに接続した結果、見た目にホースが余って長すぎるような状態にはならない。ホースは極力干渉を避けてサスペンションストロークの際に何処かと干渉するような事が無いように取り回している。
更に、フィッティング類はアルミ製よりもスチール製がお奨めだ。アルミ製の場合、締結不足による抜けや、締結過剰による割れが生じるリスクがあるためだ。更に、バンジョーボルトについては、アルミ、ステンレス、チタン等が選べるが、高熱になりやすいキャリパー側については純正スチールが理想。ステンレスボルト等では場合によっては膨張係数差によってネジ部にダメージを与えかねないからだ。マスターシリンダー側については、好みで選んで良いと思われる。なお、パッキンに用いるクラッシュワッシャについてはアルミとブロンズがあるけど、ブロンズがお奨めである。
なお、忘れがちであるが、ステンレスメッシュホースのアウターにはメッシュホースへのダメージ防止、それから、メッシュホースの擦れによる車体へのダメージ防止のために、なんらかのアウターカバーが必要。メッシュホース自体にナイロンコーティングしたものもあるけど、無い場合は、スパイラルチューブを用いてカバーを施す事が大事。カバーを施す事で、見た目的にステンレスメッシュホース化した雰囲気が失われるかも知れないが、安全第一で考えれば重要な処置だ。ガンマでは半透明のスパイラルチューブを巻いているが、CXではノーマル然とさせるために黒色のスパイラルチューブを巻いている。
ブレーキラインの変更は前後輪共に実施する人が多いけど、自分の場合、後輪は純正ホースを利用している。理由は、ステンレスメッシュホースの場合、注意していても万が一のトラブルで抜け、割れが発生する事も考えられる。その場合、後輪だけでも制動力が失われないように急激な破損に到らない純正ゴムホースを用いる事で安全を確保している。
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