ショートストロークVツイン
Vツインというと、ドコドコ感という印象が強いけど、良く見るとVツインも二種類ある。Vツインに限らず、全てのエンジンについても同様に分別できるボアとストロークの比でいう、ロングストロークとショートストロークという分け方だ。
世間一般でいうVツインのイメージは、ハーレーの印象が強いせいか、ドコドコという鼓動とトルクという印象で、高回転型というイメージは少ないけど、それはVツインというエンジン型式に由来するものでなく、どちらかというとロングストローク型エンジンの印象に近いかも知れない。まぁ、ドコドコ感という爆発感覚に関してはV型エンジン由来の特徴だろうけど、ドコドコ感=低速トルクとは違う。
自身のVツイン車というと、何れもボアストローク比でいうと、0.76という超オーバースクエア型の完全なショートストローク型エンジンである。ボアが80mmチョイ、ストロークが60mmチョイのVツインである。確かにドコドコ感はあるけど、回転上昇は非常に速く、上限は10000rpm近辺で、そこまで一気に回転が上がる。低回転でこそギクシャクするけど3000rpm以上は十分なトルクを発生し、6500rpmから更に活発に回転上昇するエンジンだ。Vツインを感じるというと、ドコドコ感という不等間隔の爆発感を中速以下で感じ、高回転に向かう回転上昇の速さは、クランクマスの小ささを感じさせるようなイメージだ。
この特徴は、恐らく一般的なVツイン評とは異なる特徴だろう。
考えてみれば牧歌的なロングストロークエンジンなど、昔の国産車では殆ど皆無だったかもしれない。Vツインの代名詞といえば、ハーレーだが、883ccモデルのボア×ストロークは、76.2mm×96.8mmというボアストローク比は1.27という超ロングストロークだけど、国産初の空冷横置きVツインの末裔であるドラッグスター1100、BT1100では、95mm×75mmというボアストロークは全く逆のショートストローク型エンジンである。実際、XV系のエンジンはドコドコ感こそあるけど、非常にスムーズな回転上昇で、高回転も軽く回るという特徴を有しており、ハーレー系のそれとは全く異なるもの。
国産でロングストロークとして定着してきたのはW650やMT-01、NC700/750といったモデル以降だ。W650では72mm×83mm、MT-01では97mm×113mmというロングストロークだ。MT-01は乗った事が無いから判らないけど、乗車経験のあるW800では77mm×83mmだけど、回転上昇は緩慢で弾けるような回転上昇とは異なる印象だ。アクセルを開けて回転上昇する程に、上昇速度は鈍る印象である。
一般に、ショートストロークエンジン程、ロングコンロッド、ビッグバルブ傾向で、ロングストロークエンジン程、ショートコンロッド、ナローバルブ傾向である。バルブ径が大きい程、大量の吸気、排気が可能で、コンロッドが長い程、ピストンの首振り振動が小さくなる。
エンジンの型式、パラツインか?Vツインか?という仕分け以上にエンジンの特性を決定付けるのは、案外見落とし勝ちなボア×ストロークだ。
弾けるような回転上昇を満喫するなら、ショートストロークエンジン、そしてクランクマス、機械損失を最小で済ませる事が出来るVツインエンジンこそが最適なのである。
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