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2016年4月23日 (土)

ツインの不等間隔爆発

二気筒以上のエンジンで爆発間隔が一定でないものを指す。ツインなら並列の180度クランクエンジンや最近多い270度クランクのエンジン、多くのVツインエンジンが該当し、360度クランクのエンジンは等間隔爆発のエンジンが該当する。今は存在しないが、並列ツインでもポイントが一個で、二気筒が同じタイミングで爆発する同爆エンジンとしては、カワサキのW1、Z750ツイン、Z400RS、ホンダのCB72TYPE2、CB250/350、CB450でも同爆がラインナップされていた。

シングルからツインが生まれる理由といえば、排気量アップのための一定上のボア拡大を困難と判断したことが発端であり、そのためにシリンダーを二つに分けたというのが最初だろう。そう考えれば、同爆ツインは二気筒が同じタイミングで爆発する。爆発間隔はクランク二回転だから720°刻みということで、シングルと全く同じタイミングで爆発する。
機械的にはシングルと殆ど同じであり、バランサーを追加しなければ一次振動が大きいのも特徴だが、それを味として残す場合も多い。特に、低回転域では爆発間隔が広いために、歯切れ良い排気音に聞こえるのが特徴。アイドリング時の鼓動はシングルそのものといえる。実際、W1の排気音の周波数はSRのそれと非常に近い。一回の爆発で発生する排圧、排気音も大きく迫力のように感じる。音で表せば、『ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ』って感じ。高回転は回らない印象が強い。回すとバラバラになりそうな印象。現行モデルならバランサー装備している同爆ツインとしてはBMWのF800シリーズが該当する。

回転を滑らかにして高回転化を図ろうとすれば、トルクの変動幅を小さくする、変動周波数を高くする、物理的なバランスを打ち消し合うようにする、、、といった方向にメカニズムが変化するが、それにしたがって、ツインのバリエーションが増えていったのである。

点火タイミングを気筒毎に独立させるという手間を掛けてまで生まれたのが、360°クランクである。これは、二気筒のピストンが同じタイミングで上下するが、爆発が交互に行われるエンジンで、カワサキのW1S、ホンダのHAWK系エンジン、ヤマハのXS、最近ならカワサキのWシリーズが該当する。クランクが一回転する毎に二つのシリンダーが交互に爆発する。クランク回転数なら爆発回数は同爆の二倍。勿論、一回の爆発毎の排圧、排気音は同爆の半分となる。アイドリング時の鼓動は非常に大人しいのが特徴。トルク変動幅は同爆の半分、変動周波数は二倍ということで同爆よりも高回転型となる。但し、一次振動は以前として残るので、これを消すにはバランサーが必須。音で表せば、『ト、ト、ト、ト、ト、ト、ト』って感じ。一回の迫力が無くなり連続的な音となる。バランサーで振動も消せば非常に大人しいエンジンとなる。180°クランク程高回転が回らないと言われているが、結構スムーズに高回転迄回るし、排気音も連続音で回して心地良く感じる。

トルク変動幅を抑えて、周波数を高めることよりも更に高回転化を狙って生まれたのが、高回転時に影響が大きい機械的バランスの不釣り合いを解消する構造。つまり、隣り合うピストンが相対する位置関係にある構造。機械的にバランスされた180°クランクである。ホンダのCB72TYPE1、カワサキのZ250FT以降のツインが該当する。傾向的には小排気量ツインに多いタイプだ。爆発間隔は不等間隔、トルク変動幅は360°クランクツインと同爆ツインの中間的な構造。360°クランクのような一次振動は消えるが、偶力振動が生まれるし、二次振動は以前として残る。音で表せば、『ダダッ、ダダッ、ダダッ、ダダッ、ダダッ、ダダッ』って感じ。二つのシリンダーの爆発が近いので360°クランクよりも迫力のある音だけど、排気量が小さいためか音自体は高めの事が多い。高回転迄回るけど、印象的にガサツな回り方と濁った排気音という印象である。

これらが基本だけど、近年は爆発間隔が180°クランクと360°クランクの中間となる270°クランクなるツインが多い。並列エンジンでのこの初物はTRX850だけど、不等間隔爆発によってトラクションを稼ぐというのが売り込みだったが、180°クランクの不等間隔ではトラクションが何故稼げない?という疑問を持っていたが、その疑問は未だに解消されていない。クランクが90°捻れた構造で二気筒が接続されているために、一次振動も残るし、偶力振動も存在する。二次振動も当然存在する。トラクションを高回転で維持するという論理から考えれば、高回転で使う大前提故に、このエンジンではバランサーが必須とも言える。
同じ爆発間隔の90°Vツインでは、一次振動がほぼ完全にキャンセルされる。そして腰下の抵抗はクランクウェブも最小で構成され、バランサーも不要という構造となる。二次振動は残るが、高回転特性は他のツインエンジンの比ではない。爆発のエネルギーが全て出力に使えるという意味では、爆発のエネルギーが顕著に駆動力に伝わるという意味で理想のツインと言える。
排気音自体は、270°不等間隔ツインでは、『ドドッ、ドドッ、ドドッ、ドドッ、ドドッ』という感じ。180°クランクエンジンより相対的に排気量が大きく、爆発間隔が広いためか、単発の爆発音を感じやすく音が低く感じる。

Vツインエンジンでは挟み角は90°に限らないために、爆発間隔は様々であるし、振動も完全にキャンセルされる訳ではないが、多くのVツインはバランサーを持たない。バランサー不要な範囲なら振動を容認するという方向性である。それでいてVツインを選択するというのは、腰上のパワーに対して腰下の抵抗が最小で受け取れるという事かもしれない。ツインの爆発力をロス無く得るのにはV型エンジンのメリットが大きいということだろう。そう考えれば、バランサー必須のツインというのは、ツインのレスポンスを最大限活かすという考えから見れば、妥協が存在するように見えたりする。

個人的に、ツインが好きでもバランサーが必須のような180°クランクツイン、270°クランクパラツインに、そこまで傾倒しないのは、そういう点が気になるからかも知れない。過去の経験では、180°クランクツインではパンチ力やダッシュ力を感じた事はあまりない。どこか粘るような回転上昇、回転上昇に錘が付いているような印象が拭えなかったし、低回転からのダッシュに感激する事もなかった。Vツインに乗る前は、70年代は不人気だったZ400RSの方が遙かに自分に合っていたのを覚えている。

ツインなら同爆ツインである初期のW1やZ400、今は同爆ツインは存在しないので普通にVツインの方が好みだ。ツインでスポーツするならば、90°Vツインに限るが、そうでなければ、90°以外のVツインも好みだ。同爆以外ならパラツインは多分乗らない。

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