4バルブ2プラグ
グラディウスの650、新型のSV650、、、興味深いのは4バルブヘッドながら2プラグという仕様だ。
そもそも、2プラグというのは、限られた燃焼時間の中で燃焼を速やかに終えるためには、火炎伝播速度から定義されるプラグから燃焼が届く範囲内にボア径が収まらない場合、即ち、ビッグボアエンジンにおいて発生するビッグボアエンジンにおいても燃焼を行わせるための苦肉の策だ。
火炎の伝播は着火点から拡がるように伝わるために、燃焼室全体に効率的に火炎伝播させるためには、着火点は燃焼室の中央に配置するのが理想的。4バルブエンジンでは、構造上、燃焼室中央にプラグを配置できるので有利だ。逆に、2バルブエンジンではバルブ径を拡大すると燃焼室中央にプラグが配置出来なくなるので、プラグがオフセットされる。こういう場合は、ボア径が大きくなるとプラグから特に遠いエリアが燃焼室内に発生するので、これを解消するのにはツインプラグ化は有効な解決策となる。
昔のZレーサーのツインプラグ化、市販車ならゼファー1100のツインプラグエンジン等が、そういう流れの存在だ。
3バルブのエンジンでも2プラグは有効で、ホンダのSOHC3バルブのVツインエンジンでも2プラグ仕様のエンジンは数多く存在する。
小さなバルブを多数配置する4バルブエンジンでは燃焼室中央にプラグが配置しやすいこともあり、4バルブエンジンでは2プラグ仕様というのは非常に稀な存在となっている。記憶では、アルファロメオのツインスパークエンジンが4バルブ+ツインプラグという仕様で過去にラインナップされていたような気がするが、最近ではあまり記憶が無い。
しかし、冒頭に紹介したスズキの最新型の650ccVツインでは、4バルブヘッドながらツインプラグだという。当然、SVと同系のエンジンを搭載するVストローム1000も同じメーカー故に同じ設計思想だろうから、予想通りツインプラグだが、エンジンの透視図を見ると、プラグはセンターに一本、もう一本は燃焼室端部に一本である。印象的に、この位置にプラグを配置した場合、バルブ径が制約を受けるのでは?とも思えるし、真上から見たら左右非対称のプラグ配置だけど、プラグが配置されていない側はどう?とも思う。まぁ、プラグが配置されていない側は、カムチェーン等のカム駆動系が存在するので物理的にプラグ配置は不可能ではあるが、、、、
ただ、これは構造を画で見ただけの感想に過ぎない。実際には、Vストロームの1000に始まり、グラディウス650等の中間排気量クラスでも4バルブツインプラグというのが定着している。これは、画で見ただけでは拭えない違和感以上の実際の効果があるのだろう。Vストロームではプラグ毎に各々がコイルを持っているという。昨日の記事にも記載したけど、このツインプラグは同時点火ではなく位相点火しているのだろうし、やはり、二つの吸気バルブ、二つの排気バルブのそれぞれのカムが、もしかしたら微妙なプロフィールの違いが与えられているのかもしれないし、バルブ自体のサイズが変えてあるのかも知れない。更に言えば、このような構造なら片側のバルブ休止機構、可変バルタイ等によって燃焼室内のスワール流が対象形状でない場合等には、このようなオフセットされたプラグ配置は極めて有効であり、そう言う事を考えると、4バルブでもツインプラグ化によって新たな可能性がひらけるのかもしれない。
ただし、この4バルブ+2プラグの構造は、基本的には燃焼が不安定になりがちな低回転域での話だろう。基本全開運転が多い状態では、極力バルブ径を大きく保て、ヘッドの排熱にも有利な4バルブ+センタープラグのコンベンショナルな構造の方が熱的にも有利であり、4バルブ+2プラグで、緻密な点火制御、バルブ制御と組み合わせるのは、不安定な中低速域での燃焼の安定化を図るモノというのが道理だろう。
勿論、全開運転を主に考えた高回転型のエンジンでも、理論限界に近づくような大きなボア径での2プラグというのは必然だろうけど、単室で500cc程度のエンジンならセンター1プラグの方が合理的に感じられる。
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