回想1986年
レプリカブームは引き続き、軽二輪、自動二輪の販売台数は好調だったけど、二輪トータルの市場は縮小傾向で登録台数は200万台を割り込む1,882,397台となったのが1986年だ。この年は、新車で登場したレプリカモデルが中古市場でも多く流通しており、実際の峠、街中では一気にレプリカモデルが溢れかえった時代だ。
時代はレプリカに非ずはバイクに非ずという傾向が更に強まっていった時代でもある。
この年は、レプリカバイクの作り方の転換点を迎えた時代といってもよいかもしれない。各クラスとも、レプリカバイクのメカニズムの本気度が前年迄とは異なる次元に突入したように思うが、その先鋭化が、後の衰退の起点となったとも言えるのである。
先ずは750ccクラスのベストテンだが、
1.スズキGSX-R750 3,050台
2.ヤマハSRX600 1,985台
3.ホンダVF750F 1,802台
4.ホンダVFR750F 1,293台
5.スズキVS750 1,236台
6.ホンダシャドウ750 1,039台
7.ヤマハXV750ビラーゴ 787台
8.ヤマハFZX750 719台
9.スズキGSX-R750R 441台
10.ヤマハFZ750 357台
このクラスにも、やはりレプリカブームが定着しつつあり、SRXが新しいトレンドとして根付いている事が伺えるが、ここで注目すべきはGSX-R750Rであろう。遂に、、、乾式クラッチ迄装備される事態となっているのだ。限定のホモロゲっぽいモデルではあるが、遂にここまで装備が過激化しているのが時代を象徴していると言える。
次の400ccクラスのベストテンは、
1.カワサキGPZ400R 11,730台
2.ホンダVFR400R 11,217台
3.ヤマハFZR400 10,527台
4.ヤマハFZ400R 8,613台
5.ホンダCBR400F 8,125台
6.ヤマハSRX400 6,473台
7.スズキGSX-R 4,833台
8.ホンダCBR400R 4,218台
9.カワサキエリミネーター400 2,906台
10.ヤマハSR400 1,633台
前年に引き続きGPZ400Rをレプリカが販売台数で追う展開。ただ、レプリカは毎年のように世代交代しており、ホンダはカムギアトレーン+ツインチューブフレームのVFR400R、ヤマハはデルタボックスフレームにクラス初のジェネシス前傾エンジンのFZR400、スズキはAL-BOXフレームというツインチューブっぽいフレームに空水油冷の新エンジン搭載のGSX-Rだ。このクラスはGPZ400Rが牽引しているせいか、多様化への模索中であり、カムギアトレーン+ツインチューブながらフルカバードエアロボディのCBR-R、ドラッグレーサーレプリカのエリミネーター等も登場している。
250ccクラスのベストテンは、
1.ヤマハTZR250 26,739台
2.ホンダVT250FE 13,609台
3.ホンダCBR250F 11,496台
4.ホンダレブル 10,263台
5.ヤマハFZ250 9,340台
6.スズキRG250ガンマ 6,727台
7.ヤマハRZ250R 6,476台
8.ホンダVT250FG 6,513台
9.ホンダXLR250R 4,611台
10.スズキGF250 3,002台
この年のエポックは遂にVT250Fが王座陥落ということ。これはヤマハのRZ後継のTZR250の登場によるものだが、このTZR、これまでのレプリカモデルの概念を完全に過去にするモノのようなインパクトを与えたのが記憶に鮮明に残っている。軽量高剛性のデルタボックスフレーム、そして次元の異なる足周り、ブレーキ、エンジン、、、、何もかもが、それまでとは違う印象だ。それまで、レプリカバイクというと高性能と引き替えに乗りやすさを失う、、、、これを当然としていたけど、このTZRの美点は、高性能でありながら、街乗り、買い物といった実用も難なくこなす事が出来たと言う事。
実用性能と高性能を高い次元で両立しているのが最大の特徴だったといえる。
ただ、それ故に、エポックメーキングでは在ったが、その王座は長く続かなかったのかも知れない。この高性能と実用性能の両立という点では、前後して登場してくる高性能DOHC16バルブエンジンを搭載した4気筒モデル達だ。FZ250を皮切りにCBR250Fも登場しているが、このTZRがレプリカルックでありながら実用目的のユーザーに受け入れられており、次の時代に、4気筒DOHC16バルブエンジンを搭載したモデルが、当時人気のレプリカスタイルで登場するのは確定的になっており、それがベストセラーの座を獲得する決定打となるというのは、誰もが認識していただろう。
そして、TZRのレプリカとしての弱点も露呈しており、この乗りやすさの部分さえもトレードオフした先鋭化したレプリカこそが、2ストレプリカの次の王者としての必須条件としては確定したといえ、TZRの次の一手を何処がだすか?ホンダがだすか?というのが、当時のユーザーの多くの注目点だったことは事実だ。
| 固定リンク
コメント