80年代のブームの構成
80年代、バイクが最高で320万台も売れてスポーツバイクが大流行、、、そういう意見が多いけど、実は、それは正確ではない。
80年代の二輪ブームは、1970年代後半に登場したロードパル、パッソルを発端とする主婦層相手のミニバイクブーム、それからオートバイがスポーツ性を高めレーサー然としたレーサーレプリカに行き着いたスポーツバイクブームの二つのムーブメントで構成されている。
ミニバイクブームは、当初は主婦層主体のムーブメントだが、その衰退と入れ替わり原付市場を支えたのは、スポーツバイクブームが下方に拡大展開したスポーツスクーターを流行させた若年層世代と言える。主婦層の原付離れを決定付けたのは、1986年の原付のヘルメット義務化であり、翌年にはヘルメットを収納するメットインタクトを初めとするメットインスクーターが発売されるも、主婦層の原付離れを食い止める事が出来なくなっていった。
ロードパルの登場前の1975年の原付登録台数は、778,117台程で現代の三倍程の登録が為されているが、この殆どはカブタイプの原付である。しかし、1976年のロードパルの登場、翌1977年にはHY戦争の口火を切るモデルとして、ヤマハからステップスルー型ミニバイクのパッソル、パッソーラが登場、1980年にはステップスルー型ミニバイクをスクーターと定義したホンダ・タクトが登場し、同年には1,978,426台とマーケットは急拡大し、1982年にはピークの2,750,000台を記録する事となる。これをピークにヘルメット着用が義務化される1985年迄は150万台以上の登録を持続することになる。これが買い物スクーター主導のミニバイクブームである。1986年以降1991年迄は登録台数は減少傾向で100万台前後で推移しているが、ミニバイクブームの収束傾向を食い止める事は出来ず現在に到っている。
これとは別のスポーツバイクブームの隆盛を判断するのは軽二輪、小型二輪の登録台数から調べる事が出来る。このジャンルの登録台数は1970年代初頭のナナハンブームを除けば、概ね5万台前後の登録で推移しているのだが、1979年に10万台を突破してオートバイブームの到来の兆候が見て取れる。この理由は、維持費の安い軽二輪クラスに専用設計モデルが登場し、維持費の安さと操作性、実用性が大きく向上したことである。モデルとしては、Z250FT、RG250といったモデルの登場によるもので、軽二輪の登録台数は1978年が23,100台から1979年では43,267台と倍増しているのである。この専用設計モデルの登場が250ccブームを引き起こしたといって良いだろう。
これが、レプリカモデルで頂点を極めるスポーツバイクブームの引き金となったブームである。レプリカバイクブームの起点は1980年のRZ250の登場で刺激され、各社から400cc以上のモデルとは異なる独自の魅力を持った高性能バイクが様々な形で提案されることとなってのだ。軽二輪の登録台数は1982年には130,779台と10万台を越え、1987、1988年は20万台越えを記録する。しかし、1989年以降は急速にスポーツバイクブームは収束することとなる。
小型二輪では、免許制度の関係から大型車への憧れが強く、四気筒モデルの開発競争がブームの起点だったといってよいだろう。起点は1979年のZ400FXだが、それにより登録台数は急激に増加し1977年の4万台から1979年には8万台と倍増する程にマーケットは拡大している。その後、4メーカーからマルチエンジン車が揃う1982年には138,235台を記録する。マルチエンジン車が出そろうと、軽二輪のレプリカブームが飛び火して加わる事で、更に販売台数は増加する。その結果、1988年までは12万台前後の販売を記録し続ける事となる。1989年以降はレプリカブームは収束し、マーケットを支えていたのは従来の大きく立派であるというマルチエンジン車、ネイキッドモデル、シングル、アメリカンといった多様化した車種達である。この多様化したモデルから、次のムーブメントを作り出して1990年代以降の小さなブームが生まれていったのである。
スポーツバイクブームを飛躍的なものにしたレプリカブームが隆盛を誇っていたのは1983~1988年で、この間の軽二輪、小型二輪の登録台数は、毎年30万台前後を記録していたのである。1979年に10万台を越えて僅か4年で三倍に膨れあがりブームが急激なモノであった事が判る。ブームの衰退は1989年以降であり、その後は緩やかに減少傾向となっており、2010年以降は10万台前後という状態で、オートバイブーム以前の姿に戻っているのが現状だ。
1980年代を振り返ると、1982年をピークとしたミニバイクブーム、それから1988年をピークとしたレプリカブームの二つの山が在ったのである。
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