二輪の規制
最近の二輪を取り巻く環境でラインナップに大きな影響を及ぼしているのが規制。規制といえば、騒音規制、排ガス規制が主なところ。
この規制の適用は、新型車は即時適用、既存生産車は一年後、既存輸入車は二年後からの適用となっている。
現存する単車の規制は如何なるものがあるか?というと、
先ず生まれたのは、騒音規制だ。
騒音測定は次の方法で行われる。
【定常走行騒音】
最高出力の60%の回転数で走行した速度(この速度が50km/hを超える場合は二速または三速50km/h)で発生する騒音を7.5m離れた場所で測定。
【加速走行騒音】
定常走行状態からフル加速して10m走行した時点で発生する騒音を7.5m離れた場所から測定。
【近接排気騒音】
停車状態で、最高出力回転数の75%(最高出力回転数が5000回転以上の場合は50%)の回転数で発生する騒音を排気方向から45度、排気管から0.5m離れた場所で測定。
最初の規制は、
1971年騒音規制値
軽二輪 定常:74db 加速:84db
小型二輪 定常:74db 加速:86db
次が、
1986年騒音規制(1971年規制値)
軽二輪 定常:74(74)db 加速:75(84)db 近接:99db
小型二輪 定常:74(74)db 加速:75(86)db 近接:99db
ここでは、加速騒音の強化と、近接騒音が規制対象となったことが最大のポイント。特に、加速騒音が大幅に抑えられているのは相当に厳しい規制だ。余談だが、我が家のCX(初年度登録1982年)、ガンマ(初年度登録1985年)はその前だから関係無い。
1998年排出ガス規制値
4サイクル|2サイクル
CO値 13.0|8.0
HC値 2.00|3.00
NOx値 0.30|0.10
というもの。この2サイクルの規制が国産車から2サイクルを消滅させた大きな理由。
この規制は、98年に126~250cc(軽二輪)に導入され、251cc~(小型二輪)のバイクにも翌年から導入されている。規制前の4サイクルというと1999年前期のモデルということになる。4サイクルで言えば、2000年以降のモデルは全車1998年規制対応となる。
2サイクルでは、この規制でほぼ全滅することになる。この規制のレベルでは、2サイクルは生き残れなかったけど、4サイクルでは空冷、触媒レス、キャブ車でも辛うじて存続可能なレベルだったけど、次の規制では、空冷、キャブ車、触媒レスでは存続不可能となる。
騒音規制は、更に強化されて、
2002年騒音規制(1986年規制値)
軽二輪 定常:71(74)db 加速:73(75)db 近接:94(99)db
小型二輪 定常:72(74)db 加速:73(75)db 近接:94(99)db
デジベルで数値比較しても判りづらいが、0デシベル差で1倍、6デジベル差で2倍、10デシベル差で3倍、20デシベル差で10倍の違い。よって、前回規制値から厳しさは倍増以上である。
2006年排出ガス規制値(前回1998年規制値)
CO値 2.0(13.0)
HC値 0.30(2.00)
NOx値 0.15(0.30)
98年の排ガス規制と較べると、大幅に規制強化されている。COは1/6以下、HCは1/7以下レベルで、98年規制の70~80%減というもの。更に、測定も始動直後の冷機モードでの測定となっている。これによって、キャブ車壊滅、空冷車は存続困難な状況となる。ゼファー等のモデル消滅の憂き目の原因となった規制だ。
この時代辺りから、日本は規制に対して国際協調(WP29)する事となる。
騒音規制では、国際基準化「騒音防止装置協定規則(ECE R41-04)」に準拠して、"PMR(Power to Mass Ratio)=最大出力(kW)/(車両重量<kg>+75kg)×1000"でのクラス分けに変わる。
Class1:PMR≦25(実質50cc)
Class2:25<PMR≦50(実質125cc)
Class3:50<PMR(実質126cc以上)
更に、排ガス規制でも、WMTC(Worldwide-harmonized Motorcycle Test Cycle)という国際基準に準拠する形となり、少し緩和。規制区分は、
Class1(アーバンクラス):50cc~150ccかつ最高速度100km/h未満
Class2(ルーラルクラス):最高速度130km/h未満
Class3(モーターウェイクラス):最高速度130km/h以上
これらの国際基準を受けて生まれた規制値は、
2012年排出ガス規制値(前回2006年規制値)
CO値 2.62(2.0)
HC値 0.27(0.30)
NOx値 0.21(0.15)
2014年騒音規制(2002年規制値)
Class1 定常:廃止 加速:73db 近接:廃止
Class2 定常:廃止 加速:74db 近接:廃止
Class3 定常:廃止 加速:77(73)db 近接:廃止
となる。この国際基準採用によって、規制が撤廃、緩和されたりして、国内モデル専用の設定がなくなり、輸出専用モデルだったモデルが小幅な改変で国内に流通するようになる等のメリットも生まれた。規制を向け先毎に変える事が不要となるのである。規制が統一化されれば大幅なコスト削減が可能となる。
フルパワーの隼が販売されたのも、このお陰である。勿論、右側通行向けの灯火類、速度リミッター等は必要だが、、、
今後の規制の見通しとしては、
2016年EURO4排出ガス規制値(前回2012年規制値)
クラス1|クラス2|クラス3
CO値 1.14|1.14|1.14(2.62)
HC値 0.17|0.20|0.30(0.27)
NOx値 0.09|0.17|0.21(0.21)
2020年EURO5排出ガス規制目標値(2016年EURO4規制値※クラス3)
CO値 1.00(1.14)
HC値 0.10(0.30)
NOx値 0.06(0.21)
となる。
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