トヨタ・クラウン
国産高級セダンの中では、売れ行きも上々の伝統的なセダン。
ただ、改めてクラウンを見ると、これはクラウンか?という気がしないでもない。
そもそも、クラウンというと国産車のフラッグシップで頂点という印象だったけど、今のクラウンというのは、マークⅡ(X)の一つ上のグレードという位置付けにしか見えない。アスリート登場以来、当時の言葉で言えばヤングエグゼクティブ相手の若々しいモデルを目指した辺りから雰囲気が変わってきて、最近はチョット落として、高偏平タイヤで悪ぶって乗るイメージが強い。
メカニズム的にも、今のモデルは直四ハイブリッドが主流。直四ハイブリッドで同じ様なエンジンを積んだモデルといえば、エスティマ、カムリ、SAI辺りと同じ。レクサス系ならISとか、その辺と同じである。マジェスタのユニットもV6ハイブリッドで、先代クラウンのハイブリッドと同じもの。マジェスタの原点は、バブル期に登場したV8クラウンが原点だけど、今はそういう意味合いも無い。
パワーユニット的にも、国産ラインナップの頂点という感じとも違う印象である。
そもそも、クラウンっていうのは日本の風土に併せた高級車であり、レクサス(セルシオ)とは違う世界で一番を目指す車だったはずだが、今は違う感じである。
セルシオとクラウンの違いは、目指す一番を果たす環境の違いという認識だった。セルシオというのは欧州を中心としたグローバルカーで世界一、クラウンは国内で一番という存在。世界で一番というのは、高い速度での安定性、操縦性、静粛性、一方で日本で一番というのは、低い速度での静粛性、都会から田舎を含む悪い路面での乗り心地というもの。 その象徴というのが、国産唯一を誇っていたフルフレーム構造では無かったのでは無いだろうか?それがモノコック構造に変わったのが1995年頃に登場した15型以降である。このクラウン以降、立ち位置は欧州志向の他の国産車と同じ存在に収まったのかもしれない。つまり、序列の中の一台で、クラウンで無くなった存在なのかもしれない。
過去のクラウンが時代と共にクラウンらしく成長して国内向けラインナップの頂点だったのは、S13型のV8搭載のクラウンV8だったような気もする。S14型以降は、オーナー層のBMW、ベンツ等の欧州志向を考慮してか、国産ハイエンドを欧州志向のセルシオに譲り、S15以降は、クラウンの日本一というアイデンティティを捨てた存在に成り下がったような印象。特に、S18型ゼロクラウン以降は、レクサス系のメカニズムを安価に身近に味わえる存在という印象で、国産ハイエンドという色合いは完全に失われており、目指す客層も、昔とは違い、随分と若い世代、或いは、チョット悪ぶる趣味を持つ成金的な層のような印象。何だか、完全に品を失ったような印象である。
まぁ、工業製品としての機能は確実に向上しているのだろうけど、志というか、そういう部分が欠けてしまった印象で、少々寂しい気持ちが拭えないのは確かである。
一般にモノコックボディの方が高剛性、高性能と言われているけど、モノコックというと卵の殻ということだけど、現実は開口部だらけのゲージ構造であり、必ずしも一般に言われているモノコックがベストとはならない気もする。SUV等では、ジムニー、エスクード2.4のようなフレーム構造を頑なに守るメーカーも在る訳で、そういう拘りこそがクラウンのようなモデルには求められているような気がする。それこそが、フラッグシップの拘りだったのでは無いだろうか?拘りを捨てるというのは、既にフラッグシップでは無いという事にしか見えないのである。
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