ハイグリップタイヤ
1980年代、峠に通ったり、サーキットのスポーツ走行、アマチュアレースに出て遊んでいた頃は、タイヤと言えば入手可能なハイグリップタイヤ!というのが考え方だった。
当時といえば、ブリヂストンならバトラックスのBT-07/08、ダンロップならTT-300/500GP、ヨコハマならプロファイヤー110といった具合。
当時はラジアルタイヤなんて無い時代だ。出始めのラジアルタイヤでは、サイロックスとういのが記憶に残っている程度。ライディーンとかも出てない頃だ。
しかし、、、
今は、ハイグリップタイヤに関心は殆ど無い。現在のスポーツバイクといえばハイグリップタイヤはラジアルタイヤであり、バイアスタイヤは20年くらいは進歩していないのが現状だ。
昔は、今のハイグリップラジアルに較べるべくもないが、バイアスハイグリップタイヤでグリップ力に任せてバンクさせて走る怖いモノ知らず感満載だったけど、今は、そんなタイヤグリップに任せて走るというのは、あまり好みではないのである。
実は、峠に通っていた時期の途中から、ハイグリップタイヤでバンク命で走る事を止めて、一歩退いた普通のタイヤで、グリップを得る乗り方、或いは、グリップを失った時の対処を身に付けるトライに切り換えたのも大きな理由だ。
割と普通のタイヤでOKという判断である。当然、コンパウンドも非常に固い。実際、ゴム硬度を測定すると、ハイグリップタイヤでは50°程度だけど、ノーマルタイヤでは85°とかで、非常に硬質だが、それで十分的な印象である。
実は、硬めのバイアスタイヤでもグリップ力に不満を覚えないからだ。バイアスタイヤでも、しっかりタイヤにトラクションが掛かるような乗り方をすれば明確にグリップ力を感じる事が出来るし、硬いタイヤは滑り出しの限界が低いので、その直前を察知する練習に持ってこいなのだ。狭いリムのバイアスタイヤでは接地面積が広くない。車体を僅かにバンクさせただけで接地面積は大きく減少するのだが、この状態を急に作り出したり、或いは、その状態でトラクションを掛けたりすると、割と簡単に滑らせる事が出来たりする。
因みに、普通のタイヤでも意図的にグリップを失わせようとすれば、バンクアングルの小さな段階でバンク速度を大きく変えたり、トルクを掛けたりする切っ掛けが必要。これを現代のバリバリハイグリップタイヤで接地面積の広いワイドホイールで行おうとすれば、速度も高く、バンクも深い状態でのトライとなりリスクを伴うのがNGである。
コントローラブルな車体、低回転でレスポンシブなエンジン、そして、細く尖った硬いタイヤという組み合わせでは、車体が差程寝てない状態でグリップを失わせたり復帰させたりの練習には好都合だったりする。
まぁ、今時のハイグリップラジアルタイヤで、石橋を叩いて渡る的な走り方でバンク角を少しずつ深くするような乗り方をする人から見れば、アグレッシブに見えるかも知れないが、この違いは、グリップ大前提で走る今時の人と、グリップを失うのが当然という意識の昔の人の走り方の違いなのである。自分世代の走り方を見ると、今時の人は理解できないかもしれない、、、、事実、バンクモーションの速さを指摘する人もいるのは事実。でも、そういう切っ掛けで意図的なブレークを作るのも楽しいし、それが出来るパッケージも好みなのである。
自身、CX改を好みなのは、そういうポイントがあるのだ。そんなCXのリアタイヤは、普通のタイヤであるK527で、120/90-V17というサイズ。90偏平の丸っこいタイヤである。幅は120と今時の125cc並である。でも、このサイズの普通のタイヤに中低速でレスポンスの良いエンジンが組み合わされば、グリップを奪う事も可能なのである。
これが、160幅とかのラジアルタイヤだと、とてもじゃないけど、そういう滑り出す感覚を会得するようなトライはやれたもんでは無いのである。
実際、ハイグリップタイヤが装着されているBT1100等は、乗ってみると安心感は絶大だけど、これに乗っても上手くはならないだろうな、、、という感じだ。
先日、自身の乗り方に対して、そういう乗り方だとスリップして転けるのでは?という指摘を受けたが、残念ながら、もう30年は転けてないのだ。ハイグリップタイヤ前提で、それを信じて走る怖さ、、、これに気付いたのが1986年の事。そっちの方が、個人的には遙かに怖いのである。
路面のコンディションの変化、思い掛けないタイヤの劣化、、、これに気付かず吹っ飛ぶ、、、それは避けたいのである。
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