二輪車のブーム
今の時代、二輪車のブームと言えば、ロードバイクが牽引するスポーツサイクルブームだろう。ただ、このムーブメントは、収束傾向にあるように感じるが、これが収束するか?或いは、円熟して定着するかは判らない。
過去の二輪車ブームで、一気に花開いて収束したものを思い浮かべると、オートバイブームというのがある。
オートバイブームも色々で、細かく分けると、1970年代初頭のナナハンブーム、1970年代後半のミニバイクブーム、1980年代のレプリカブーム、1990年代初頭のネイキッドバイクブーム等々あるけど、社会を巻き込んだブームとしては1980年代のレプリカブームだろう。
ブームというのは、大きく分けて2種類のムーブメントがある。一つは、完全に嗜好品として格好良さが受けたブーム。これ、ブームを加速させるポイントとして格好良さを認めた若い女性の参加というのが必須要素といえる。もう一つは、利用環境のメリット等に着目して実用品としての利便性が受けたブームだ。ムーブメントの牽引を考えると、前者は若い女性、後者は利便性といえる。そして、ムーブメントの収束は?というと、前者は若い女性が去る事、後者は普及する事による弊害に対する規制強化が原因となる。
オートバイブームにおいて、格好良さを若い女性が加速させたブームは、レプリカブームといえる。実際、レプリカブームの時代は、レプリカバイク、レースクィーンというのは華やかさの象徴的な存在であり、若い女性が革ツナギ、フルフェイスから出た長い髪を靡かせてレプリカバイクに乗るというのが格好良さの一つとして認知され、そういうシーンを街中で見掛けたモノ。しかし、男性にとっても、街中使用では、前傾度のキツイレプリカバイクというのは扱いづらく、更に、毎年のように新型が登場していく中では、実際に使いづらく、高い金を払って手に入れた愛車の陳腐化で、ブームに付いていく事に疲れる人が出るのも致し方ない話。格好良さ重視のブームにおいて、対極の実用性等皆無であり、実用性の無いモノを実用に使うという無理に気付かれた後は、特に、格好重視の女性が離れるのはアッという間で、女性が去った後のブームは見る影も無くなったのである。
オートバイブームで、実用性によるムーブメントといえば、古くはミニバイクブーム、メットインバイクブーム、車検の無い250ccが注目されたクォーターバイクブーム、最近では実用性に優れた原付二種スクーターブームがあるけど、規制の強化で魅力を失ったミニバイクブーム、メットインバイクブームを除けば、手堅く堅調に推移しているのが特徴だ。
自転車ブームで、実用性によるムーブメントといえば、何と言っても電動アシスト自転車ブームだろう。1990年代に登場以降、確実に市場を拡大し、今では無くては為らないジャンルとして確立しているのが特徴だ。
で、本題の今のスポーツサイクルブームだけど、これは自転車でもタイヤが細く、前傾姿勢がきつく、荷物も積めないロードバイクによるブームだけど、このブームは何時まで続くか?という話。
ロードバイクのブームは何時からか?というと、高価格帯のスポーツサイクルの販売台数が増加に転じた時期を探す事で或る程度特定出来る。
ロードバイクで高額車両の販売が顕著になり始めたのが2005年頃、そして、ロードバイク自体の出荷台数が増えたのが2008年頃である。高額車両の販売のピークは2010年頃で、それ以降は、高額車両の出荷は微減傾向となっている。これは、当サイトの『日本二輪事情』を参照頂きたい。
そんなロードバイクブームは、これから持続するかどうか?を考えると、趣味品として格好良さが注目されているブームであり、そういう意味ではレプリカバイクブーム同様に収束していくような気がする。タイヤが細くメンテを怠るとパンクする、荷物積めない、姿勢キツイ、泥はねで汚れる、、、という事で、多くの部分でレプリカバイクの実用性の無さとオーバーラップする。
自転車ということで、単車との大きな違いは、やはり健康、ダイエットに効果がある?という部分だけど、健康、ダイエット目的だけなら、自転車よりも効果的で合理的な方法は幾らでもあるのが現実だし、自転車でダイエット効果、健康維持を考えると、毎日頻繁に乗るという事が大事。そして、健康、ダイエットにはスピードは不要とういことで、健康、ダイエットならロードバイクよりも、クロスバイク、街乗り自転車の方が好適と言う事。
その辺りを考慮すれば、ロードバイクブームの収束も時間の問題のような気がする。
実際、昨年辺りから、定例で行っている早朝の自転車乗りでも、他のロードバイクと出会う頻度は激減している。出会うロードバイクというと、中高生の部活連中、後は、十年以上前から出会っていたソロで走る人くらいである。
今後のスポーツサイクルブームを占うと、単車における小さなブーム(ネイキッドバイク、リッターバイク、ビッグスクーター、バイクカスタム)のような、小さなムーブメントがカテゴリーの中で散発するのかもしれない。小さなムーブメントが続く事で、市場、環境に根ざした文化として定着する事が出来ればベストだろう。今の単車で原付二種スクーターが市場を形成しつつあるのは、環境にマッチしたモノを長いムーブメントの変遷の中で辿り着いた結果のように見えるのである。
自転車でも、MTB、BMX、ランドナー、スポルティーフといったカテゴリーのモデルが小さなムーブメントを変遷する中で、日本市場においてベストな自転車の形に行き着けば良いのではないだろうか?
個人的には、機動性、利便性ということを考えると、折り畳み小径車というのは辿り着くべき対象として悪くない選択肢だと考えている。小径車を過激にスポーツ方向に振るのではなく、実用性を確保した上での形が生まれれば、市場に受け入れられて新たな市場を形成するのでは?と考えている。
自身、最も活躍しているのは、DAHONベースの実用性能をアップさせたモデルだけど、非常に便利で、快適である。こういうところに落ち着くような気もする。
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