これまで、ハイケイデンスでのペダリングを志向してきた。回転慣性を最大限活かし、最も効率的なポイントのみでトルクを伝える事に特化して、最小限の力を最大効率で伝える。その頻度を高めるために回転数を高めるという方向性だ。
ローラー台上では240rpmのケイデンスも可能だし、実走でも160rpmに楽に到達させ、常用で140rpmを持続出来るようにペダリングの方法を整えてきた。
ピストでは、44T×17Tで50km/hも可能で、このペダリングが一番合理的か?とも思っていたけど、最近は考え方が少し変わってきた。
このハイケイデンス志向のペダリングでは、姿勢的には相当な前傾姿勢の前乗り。ハムストリングスも使うけど、脚の前面側の筋肉の使用率が高い。極力、ロスを減らしたいのでタイミングの一瞬を狙ってペダリングを行って、力を入れる時間を最小に留めるようにしている。このペダリング方法に決めて数年が経つけど、これで間違いが無いと感じていたけど、このペダリングが全域で使えるか?というと、実は違うようだ。
それに気付いたのは、5年前に仲間内で行ったサイクリングでの出来事。13%オーバーの峠で、とあるサイクリストの登坂ペースで限界を感じたのが切っ掛けだ。その峠迄の70km程の平地区間では、それまでのペダリングで35km/hアベレージを保ちながら独走できていたけど、登坂でペースが維持出来ず、速度に大きな波が生まれ、一寸厳しいという感想を得た時が始めてだ。
そこで、ピストのコグを16Tに変更して、毎週末12.5%の勾配のヒルクライムを続けてきたけど、ギアを重たくしたピストでヒルクライムを続けても、正直、維持出来るのは1km程度で、それ以上となると全くダメという印象。
その後、同じ峠で、同じメンツでサイクリングする事があり、再度、ヒルクライムを行った時、軽めのギアでクルクル上る漕ぎ方で挑むも、クルクルする漕ぎ方でケイデンスを保つ乗り方では、速度が乗らないのである。ペースは保てるけどペースが低い、、、、これでは話にならないのである。
ただ、この辺が自分の限界か?と思っていたのだけど、この夏から、ローラー台の負荷ユニットの調子が悪くなって、ローラー台トレーニングを地元の団地を峠のショートヒルクライムに見立て周回走行する事にした。
このヒルクライムの周回走行を始めた当初は、ピスト的にかなり重たいギアで勢いで上る事を試みると、1周回で標高100m分しか保たない事が判明。次に、軽いギアでクルクル上るのでは、5周回の標高500m分がペースを保つ上限で、ペース自体も登坂速度で6~8km/hとダメダメなペースに留まっていた。
で、そこで行ったのが、識者の意見の再確認。ブログにも記載したけど、NHKの『中高年のための楽しいサイクリング生活』等の番組のインストラクターさんの意見。
当時は何気なく見ていた録画、目的を持って見ていて気付いた事があったので、その方法を実践。
それをベースに色々と確認して到達した結論が、ローケイデンスでの漕ぎ方。この漕ぎ方の方が、ハイケイデンスのペダリングよりも有利な状況もあるという認識である。
そもそも、この思い付きは、同じくNHKのチャリダーって番組のヒルクライムのコツというインストラクト。
NHKチャリダーでは、登坂時においてもペダリングにおけるトルクを鉛直下向きに真っ直ぐ掛ける事が出来るように、前屈みになってペダルを真下に踏む事が出来れば平地と同じ様に漕げるという説明。
この説明に従って、周回ヒルクライムで実践すると、確かに、その漕ぎ方をすればケイデンスが高まり登坂速度を高くする事もできるけど、問題は、そのペダリングでは1周回、標高で100m分しか持続出来ないと言う事。頑張りすぎると、疲労でペースダウンが著しいのである。
と言う事で、この漕ぎ方はヒルクライムペダリングには不向きという結論である。
番組の中では、固定式トレーナーを使って車体を傾けた状態で解説していたので、正に正しいと思ったモノだけど、現実には違ったのである。
え、色々考えて、平地とヒルクライムの違い、、、それは、自転車の推進において回転慣性が利用できるかどうか?という部分である。回転慣性を使える状態であれば、ハイケイデンスのワンポイントでのトルクを掛ける乗り方も有効だけど、慣性よりも抵抗が上回るヒルクライムのような状況では、慣性によって保てる速度よりも抵抗によって低下する速度の幅が大きく、結果的に失速するという理解に至ったのである。
ペダリングにおいて駆動力が抜けた状態が抵抗で失速する状態であり、ハイケイデンスであればあるほど、失速する状態のクランク角度域が広いということ。ということで、トルクを掛け続ける角度を広げるようなペダリングにシフトする事としたのである。
そもそも、急勾配の登坂は、ポジショニングがどう変化するか?を考えると、10%の勾配で自転車は5.7°程後傾する。具体的に言えば、シート角が寝るのである。それに併せ、ハンドル位置がアップライトにシフトするのである。5%の勾配なら2.8°寝るのだ。この状態から、前乗りに好都合の前傾ポジションを作ろうと思えば、サドルの最先端部に腰掛けても追い付かないのが現実なのである。5°を座る位置で取り戻そうと思えば60mm程先端に座る訳だ。
そう考えると、急勾配になる程、実質的なシート角が寝ていく訳であり、そのジオメトリーに併せたペダリングを行う方が良いのでは?という思いに到達する。
シート角が寝た自転車といえば、セミリカンベント、クランクフォワードの自転車で、これらの自転車は相対的に状態もアップライト気味となる。このような自転車のペダリングは、基本は腰を固定してしっかり脚で漕ぐのである。筋トレで言えばレッグプレスマシンで脚を伸ばすような漕ぎ方である。この動作では、脚の裏側の筋肉+上腕~胸の筋肉をフルに活用するのが特徴である。レッグプレスマシンでは、手でグリップを握り、腕の力、胸の力の反力も踏み下ろす力に乗せている。
そこで、このような意識で、ロードバイクでありながらクランクフォワード自転車を漕ぐ漕ぎ方で望む事としてみた。
すると、クランクを回した瞬間に、股下で自転車が電動アシスト自転車でアシストを受けて自転車が勝手に進むような感覚で自転車が進む感覚である。
そして、その押し出し感は、上腕、上体の筋肉を意識してしっかりつかうほど、自転車の推進力が高まるのである。前乗りでの脚の表側の筋肉を主体とした乗り方に比較すると、全身の多くの筋肉をしっかり活用しているように感じる。
たあ、この全身の筋肉をペダリングリズムと協調させるには、ペダルから離れた場所の筋肉を適切なタイミングで使うために、意識した自覚動作が必要なのである。そして、腕の筋肉、胸の筋肉を使うタイミングは僅かにシフトさせる方が効率的に自転車が進むように感じる。この微妙なタイミングで全ての筋肉を使おうと思えば、リズムを自覚するのが大切であるとともに、速いリズムでは追随しきれないというのが感想である。
このリズムで全身の筋肉を使う場合、最高ケイデンスでも70rpm以下に留めるべき。リズムを整えると50rpm程度が自分にはベストのようである。
更に、多くの筋肉を登坂で使うので、必要な筋力は全筋力に較べると小さな割合ですむために、長時間リズムを保ちやすい事も確認した。
結果的に、このようなクランクフォワードペダリングでローケイデンスで漕げば、ハイケイデンスペダリングに比較して、回転数は2割減だけど、使うギア比は2割程重くても負荷を感じることなく、ヒルクライム周回では10周回、標高1000mを消化してもリズムが狂わない事が判った。
因みに、ペダリングではハイケイデンスのピスト巡航時はクランク水平時のピンポイントで動力を伝えるイメージだったけど、ローケイデンスのヒルクライム時はクランク上死点近辺から下死点手前の幅でいえば90~120°の幅で動力を伝えるイメージ。片側で動力を伝える作用角が広ければ、対象の片側で動力を伝える迄の動力抜けの間隔が非常に狭くなる。抵抗力による失速の時間が僅かで済むので失速感を生まないのもメリット。
最近のコメント