ドライブトレーン
二輪車のドライブトレーンといえば、今や殆どがチェーンである。アメリカンタイプのクルーザーにベルト駆動がある程度で、シャフト駆動というのは、いまや少数派である。
90年代以前は、スポーツモデルは殆どチェーンドライブ、重量車のヨーロピアンツアラー、アメリカンクルーザーの類はシャフトドライブ、ハーレーのみベルトドライブというのが棲み分けである。
チェーンドライブ、シャフトドライブ、ベルトドライブの歴史は何れも長いもの。チェーンドライブというのは、バイクが登場して以来、スタンダードな駆動方式である。
シャフトドライブというのは、元々はクランクシャフト縦置きエンジンのモデルにとってはスタンダードなドライブ方式である。有名なのはBMW、モトグッツィだ。国産車で古いものは?といえば、BMWコピーのDSK(BMWのR25のコピーモデルが有名)もシャフト駆動だし、モトグッツィ的な縦置きVツインを搭載したライラックもシャフト駆動である。縦置きクランクの場合、アウトプットシャフトにユニバーサルジョイントを接続してドライブシャフト経由してベベルギアを駆動するというのは極めてシンプルな構成で、縦置きクランクのモデルにとってはシャフト駆動こそ最も合理的な形態と言える。
縦置きのシャフト駆動車で近代の国産車といえば、ホンダの400~1800ccのバリエーションを持っていた縦置きVツイン、フラット4、フラット6のCX、GLシリーズが有名である。
横置きクランクのエンジンにシャフト駆動を採用する場合、出力軸の向きを90度変える箇所が二箇所(アウトプットシャフト部とファイナルギアケース部)必要となるので、横置きクランクエンジンでシャフト駆動車というのは、チェーンの信頼性や耐久性が大パワーに対して懸念が残るような車両、例えば、Z1300とか、ZL900、Vmaxのようなモデル、或いは、メンテナンス性を重視したツーリングモデルが殆どである。横置きエンジンでシャフト駆動車が多いのは、1980年代のヤマハ車。XS750、XJ650/900、XS1100等でヤマハの4サイクル重量車といえばシャフト駆動というのが定番だった時代もある。この時代は、国内メーカー各社ともシャフト駆動車のラインナップは豊富であった。
ベルトドライブというのは、今やハーレーの定番だけど、最近はヤマハのVツイン、スターシリーズのモデルの多くがベルト駆動で、アメリカンクルーザーの定番的な位置付けだけど、国産車に限れば、先駆けは1982年にZ400GPをベルト駆動化して鈴鹿四耐にエントリーした事が最初で、その後、カワサキの中排気量を中心にベルト駆動車が一時増加したことがある。当時のラインナップは、250~400ccのシングル、ツインのLTDシリーズが殆どで、スポーツモデルとしては空冷のGPZ250のみである。
チェーンに較べて伸びにくく耐久性に優れ、シフトショックもソフトに吸収してくれる等メリットは多かったけど、如何せん、大きなプーリーに幅広のベルトという重ったるい外観が受けなかったのか、一代限りで採用が見送られる事となっている。
現代においてベルトドライブが採用されている大型のVツインクルーザーというのは、ベルト駆動用プーリー、ベルトの太さがデザインにマッチしているのが最大の理由だろう。
ここ三十年の大きな変化といえば、シャフト駆動車が非常に少なくなっていると言う事だ。シャフトドライブの特徴といえば、デメリットの方が取り上げられる方が多い。
デメリットが多いけど、その特徴は、
・重たい
・減速比の変更が出来ない
・高コスト
・メンテナンスフリー
・汚れない
というところで、個人的には、メンテナンスフリーで汚れないというのが非常に大きなメリットと感じている。
良く言われている、チェーン、スプロケの交換による最終減速比の変更が出来ないという話だけど、チェーン駆動のモデルでもギア比を変える事は殆ど皆無。それ故に、そのデメリットの不便さを感じた事は無い。個人的には、非常に優れたドライブトレーンだと思うけど、チェーンの信頼性、耐久性が高まった現代においては、シャフトドライブが復権することは無さそう。
ただ、これからどうなるか?というと、必ずしもチェーンドライブ方式が主流であり続けるとは限らない。
他に考えられる駆動形態としては、1980年代のモーターショーで登場したコンセプトバイクであるファルコラティスコに採用されていた液圧駆動を思い付く人もいるだろうけど、油圧駆動モーターというのは、管内駆動油を循環させて駆動するモノで、現実には非常に五月蠅く、運用上も流体を密閉し続けるという部分で耐久性、信頼性を考えるとすれば主流とは成り得ないだろう。
今の時代なら、電動化技術の並がバイクに入るとどうなるか?というところだけど、その形態は電動アシスト自転車の進化の形に沿っていくのではないか?と考えられる。自転車の場合は、ドライブチェーンの駆動元がクランクに加えて、ドライブスプロケットが加わっているけど、そういうパターン。この場合だと、当然、ドライブトレーンはチェーンドライブだけど、完全に電動のバイクとういことならば、ドライブトレーン不要のインホイールモーターによるドライブ方式が主流となっていくのではないだろうか?
ドライブトレーンがチェーンから変わるタイミングというのは、恐らく、電動化が進むことによるインホイールモーターによるドライブ方式が登場する事ではないか?と思われる。
インホイール式モーターによるダイレクトドライブが主流となると、従来のエンジン部分に十分な電池を搭載する事も出来る。モーターの小型化、高出力化が進むと、両輪駆動のモデルの登場も期待されそうだ。
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