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2025年4月24日 (木)

特許は不要3

先に紹介した特許化した技術による軸受システムで、大きな問題が発生することなく社会で製品は活躍していたが、2017年の大雨の際に、当該ポンプを採用した基地に、大量の汚水が混入し、ポンプが異常摩耗を来す事態が発生した。

この汚水を分析すると、非常に流動性の悪い繊維性物質、石鹸、乳化液を大量に含む高粘性液体が突入していた事が判明した。

そもそも、滑り軸受では、荷重、周速、粘度が設計における重要要素。粘度が大きく変化するような状況では、本来は滑り軸受は使用できないもの。特に、粘度が非常に高い荷液が突入すると異常発熱して抱き付くリスクが極めて高いモノである。

先の特許では、水+スラリー(3000ppm以下)に対応した異物迂回システムを提供したもの。このシステムでの迂回流路はφ6~φ20程度の穴を用いているが、この穴を滞りなく通過出来なければ機能しないのである。この穴や軸受隙間が目詰まりを起こせば異常発熱を来したりしてトラブルを誘発する。

そこで、高粘性荷液、難流動製異物が軸受部に突入しても強制的に排出するシステムを考案した。開発は2019年から実施、2020年に構想、試作完了。2021年にかけて実証できたので、2021年に特許申請したもの。それは軸受側でなく回転する軸スリーブ側である。本来、軸スリーブ側に機械加工を施す事は無いが、新しいシステムでは軸スリーブ側に螺旋溝を設ける事で、回転に併せてアルキメデスのスクリューポンプのように軸受隙間に侵入する物質を隙間外に搬出する能力を有している。これによって、高粘性荷液においても軸受隙間を拡大させることなく軸受システムとして機能させる事が可能となった。構造的には完全にスクリューポンプである。極めて単純な構造なのだ。それ故に、スクリュー溝の物体は軸回転によって軸受隙間外に搬出出来る構造なのだ。所謂、アルキメデスポンプの理屈で難流動性物質を搬出しているだけに過ぎない。間違いの無い確実な理屈故に特許申請に見合うと判断したのである。
これは、高粘度オイル、ゲル状液体の搬出にも対応出来るシステムとして提案したが、やはり勤務先のメーカーとしては、ポンプ用技術として占有すべき技術とは見合わないということで申請は断念。結局、これも自前で特許申請を行っている状況。

実は、勤務先では入社以来、12件の新技術開発の報告を行ったけど、申請して特許化したのは2件のみ。他の10件の内、自分で有望と考えたのが、ここで紹介した三件。これ、魅力が無いと言われても個人的には魅力アリと判断。実際、先の特許は同業他社が強い関心を持って実際に商品化したりしている。それ故に、本件についても申請したのである。

こちらのシステムは、これからの製品となるが、都市部の下水ポンプにおいて汚水ハンドリングを想定したシステムに向けて普及が広がるモノと見込まれている。

このシステム、先に紹介したドライ対応軸受と併用して使えるのもメリット。組み合わせれば、スラリー等異物混入、ドライ摺動、高粘度荷液対応というマルチユース対応の軸受となる。

まぁ、ポンプ等の製造業でも、こういう特許に関心が全くない企業ってのも実際には存在している。

特許に関心がないということで、ここ十数年、新技術による新製品の開発は皆無。

まぁ、経営者の企業生存競争における戦略から、新技術による新市場への展開というものがなければ、新しい技術に付き物のリスクは受け入れる事が出来ないのであろう。

なお、この技術、及び、前に示した無潤滑摺動対応の軸受システムは、興味のあるポンプメーカー、軸受メーカーがあれば、セットで技術提供しても良いと考えている。

興味が有ればどうぞ。

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