特許は不要2
二番目の特許、最初の特許は軸スリーブにCCコンポジットという高価で大型な製品の製作が困難ということ。更に、本質的に高硬度を有する事が難しく耐摩耗性を確保する事が困難ということで、利用可能な分野が限定的であった。
軸受側に高硬度セラミックスを用いたとしても、高硬度とは言い難いCCコンポジット材料をスリーブとして用い、スリーブ側が激しく摩耗したら使い物にならないのである。
その摩耗の原因は、高硬度セラミックスを分割配置した構造故に生じている事を突き止め、固定軸受側の軸受溝に相当する潤滑流体通過溝を減らす取り組みを行う事になった。
結果、固定軸受側軸受摺動面には潤滑流体通過溝を全く設けない完全連続面を与えることで、軸受隙間への摩耗因子となるスラリー粒子の侵入を大幅に削減出来る事が分かった。更に、軸受隙間近傍のスラリー粒子を選択的に迂回させるために、軸受摺動面に隣接する部分にスラリー等を迂回通過させるバイパス通路を与える構造を考案した。
これ、原理は至って簡単。異物の流路回避は、電気回路で抵抗並列繋ぎの考え方。電流は低抵抗の方に選択的に流れる。つまり、狭い軸受隙間と広いバイパスラインが隣接していれば、異物はバイパスライン側に多く流れるという仕掛け。更に、旋回流れ中では遠心力で中心の近い軸受隙間より外周側のバイパスラインに比重の大きなものが飛ばされるという遠心分離器の考え方も用いている。理屈はこれだけ。単純だけど明快なメカニズムを軸受部の異物分離に用いているだけである。至って単純なのだ。それ故に特許申請したのである。
これは、ドライ摺動時における摺動面で発生する熱を、軸受摺動面から速やかに除去する放熱面積の拡大にも寄与しており、ドライ運転時における軸受隙間の変化幅を抑え、軸受隙間を適正に保つ事にも寄与している。
この滑り軸受システムは、固定側軸受にステンレス製軸受、回転側軸スリーブには炭素-金属の複合材料を用いている。スリーブ側材料はCCコンポジットとは異なるムク材料を用いており、膨張係数としては5×10^-6程度であり、軸受側は16×10^-6となっている。そのため、温度上昇と共に軸受隙間は大きく拡大するが、軸受側に放熱面積を確保して軸受温度上昇を抑えているために、ドライ運転時における温度上昇は軸受側は軸側の1/3に抑えられている。そのため、上昇温度と膨張係数を併せて考慮すると、温度上昇に伴う軸外径膨脹量と軸受内径膨脹量は等しく保たれる構造である。これによって、全温度域において軸受隙間が一定に保たれる構造となっている。
この考え方による新しい軸受システムの考案は2010年、特許申請も経営者に打診するも不要という判定にいたり、これも個人で申請を行う。なお、この申請は2019年に特許化している。
これによるシステムは、非常に大きなシステムにも対応出来る構造となっており、東京都を始めとする多くの自治体の先行待機ポンプ、管理運転ポンプに数多く採用されている。そういう自治体に納める複数のポンプメーカーの標準採用品ともなっている。
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